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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第116回

不評のInstagramのアイコン変更、困惑は間もなく過ぎ去る?

2016年05月18日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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 Instagramは、その5年間の歴史で初めて、アプリのアイコンを大幅に刷新しました。虹色のカラフルなグラデーションの背景に、非常に単純化されたカメラの輪郭とレンズです。

 しかしこれは、世界中のユーザーから不評です。

 Instagramは自社のブログやInstagram内広告で、ロゴ変更についての説明を続けています。しかしそうしたポストには「ダメだ」「捨てちゃえ」「やりなおし」「元に戻せ」という辛らつなコメントが連なっています。

立体的なカメラのアイコンから、フラットな抽象化されたアイコンに変更。現時点ではまだ受け入れられない声が多いようです

アプリアイコンが構成していたその人の「生活」

 こうしたユーザーの反応を、Instagramはどれだけ予想していたでしょうか。程度の問題はあれ、これだけの大幅な変更はユーザーの批判を浴びるということを予期していたのではないでしょうか。

 これはInstagramに限ったことではありませんが、アプリのアイコンには、我々ユーザーにとって、そのアプリを起動するための目印以上の重要な役割が込められていたから、と解釈することもできるでしょう。

 Instagramはこれまで、レトロなインスタントカメラのデザインで、誰でも簡単に見栄えの良い写真を共有し、写真を通じた友人とのコミュニケーションを楽しむプラットホームとして愛されてきました。

 企業広告の要素は入ってきましたが、美しい写真が自分のフィードに流れてくると、広告であっても悪い気分にはなりませんし、自分の写真をより洗練したものに仕上げようという、クリエイティブな気持ちすら湧いてきます。まるで、写真雑誌を見ているかのような体験を自分で作り上げることになるからです。これは正直、うまい演出だなと思っています。

 Instagramを頻繁に開き、写真を投稿し、友人にコメントしている人にとって、Instagramは生活の一部、お気に入りの「道具」になっていたはずです。こだわる人は、Instagramの雰囲気に合わせて、ホーム画面のアプリの並び方をアレンジしていたかもしれませんし。

 クルマ好きの筆者が例えるなら、せっかくこだわって、しっかりメンテナンスしながら、古いVWビートルや、BMW 2002に乗っていたのに、これがいきなりワインレッドのTesla Model Xに変わっていたらどう思うでしょうか。

 Tesla Model Xが悪いわけではありません。クルマの快適さやクールさ、環境性能は格段に上です。しかしオールドカーがある生活を楽しんでいた人が、急に最新の電気自動車にすり替えられていたら、それは怒るというものです。

 Instagramのデザイン変更は、そんな出来事だったのでしょう。

よくぞカメラのモチーフを残した

 筆者は、Instagramのアイコン変更の前に、やはりアプリのアイコン変更で困惑した出来事があります。それはUberです。

 Uberは、バークレー周辺での生活位は欠かせない「足」ですが、ある日突然、ホーム画面でUberアプリを発見できなくなってしまい、ちょうど急いでいたこともあって焦りました。夜間のアップデートで、アイコンが変わっていたことに気づかなかったからです。

 結局、iPhoneのSpotlight検索で「Uber」と入力して、アプリを見つけることができました。これまでの「U」のモチーフもないし、アイコンもどう見ても「U」を想起できないものになっていました。

 「あれ、怪盗グルーのアプリなんていれたっけ?」と思ったのですが。ちょっと似てますよね、グルーさんのロゴに。予告編ビデオで出てくるミニオンズ(黄色い生物)のお腹のあたりや、ゴミ箱に描かれているロゴです。

 Instagramについても、筆者は「こんなアプリ入れたっけ???」というのが朝起きた時の感想でしたが、そもそもホーム画面で最もタップしやすい右下に配置していたこと、そしてカメラのモチーフが残されていたことから、Instagramのロゴが変わったのだ、という気づきを得ました。

カメラのモチーフは残されている

 その点で、「よくぞカメラのモチーフを残してくれた」と評価する部分も生まれました。

 Instagramは、もはや静止画だけのサービスではありません。FacebookはMessengerのコミュニケーションにアニメーションGIFやビデオを持ち込みつつありますが、Instagramも15秒から拡大された60秒のビデオを投稿することができます。

 先日、National Geographicのアカウントが投稿していたのは、広大なパノラマ写真をただ左から右に流して全景を見せるというムービーでした。なるほど、静止画の写真を映像にしただけですが、ちょっとドラマティックに自然の写真を楽しめますよね。

 また、時間をキュッと圧縮するHyperrapseや、昔の映像コントでおなじみの再生・逆再生を繰り返す効果を作れるBoomerangも、映像系の関連アプリです。

 このようにInstagramの楽しみ方が多様化している中でアイコンを変更するのであれば、もはやレトロなカメラのモチーフすら、残さなくてもよかったのではないか、とすら思えました。それが、新しいアイコンをポジティブに評価できる残された要素だったかもしれません。

 でも、まだ慣れませんけれども。

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