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開発は富士通

日本海事協会の船舶ビッグデータ基盤が稼働、業界に公開

2016年05月09日 12時45分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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 富士通は5月6日、一般財団法人日本海事協会の船舶ビッグデータプラットフォームを構築し、2016年4月より稼働したと発表した。

 日本海事協会は、1899年に設立された国際船級協会。主な業務は、船舶の安全を確保するために制定した規則が、建造時と就航後の船舶に適用されていることを証明するため検査を行うこと。規則は船体構造のみならず、推進機関、電気、電子システム、安全機器、揚貨装置など多岐に及ぶ。そのサービスを世界中で利用できるよう、検査員事務所のネットワークを全世界に展開。船舶に関する人命及び財産の安全、さらに、海洋環境の保全を期すことを目的として活動している。

 海事産業においても、海上ブロードバンド通信の発達で、運行情報や船舶搭載機器に設置されたセンサー情報の収集・モニタリングが可能となり、データを活用した省エネ運航や故障診断といった新たな取り組みが注目されている。ただ、これらの仕組みを個別に構築した場合、データ運用の取り決めやセキュリティ対策、コスト・手間が負担となり、一部の船舶や海事事業者の実用に限られていた。

 今回運用が始まった船舶ビッグデータプラットフォームは、海事業界に広くデータ活用を促す共通プラットフォームとして収集したデータを提供する、業界初の取り組みとなる。運用は日本海事協会の子会社として、2015年12月に設立されたシップデータセンターが担当する。

 システムの特長は、データ分析・活用の仕組みを短期間で構築できる点。個船より送信されるVDR(Voyage Data Recorder:国際航海に従事する船舶に搭載が義務づけられる。船位、船速、船首の方位などの航海情報が記録される)などの航海系情報、機関エンジンや搭載機器の運転・計測情報(マシナリーデータ)に加え、全球の気象情報を収集・蓄積する。

船舶ビッグデータプラットフォームのシステム概要

 海事事業者は従来、船舶のデータを活用するために個々に必要なデータを集め、統一データとして結合する必要があったが、シップデータセンターにて各種データを一括収集し、各事業者に特化したデータフォーマットを生成してWeb APIで提供されるため、利用者は一から仕組みを準備することなくすぐにビッグデータを活用できるという。様々な形式で収集される各種データは、CSV、JSONなどに変換した上でデータ提供される。

 業界共通プラットフォームとして安全に利用するには、セキュリティも重要だ。船舶データは、インターネットを経由し収集・蓄積・配信されるため、シップデータセンターでは、データのウイルスチェックやユーザー認証などのセキュリティ機能を備えることで対策を行っている。

 今後、富士通はAIによるデータ解析技術の活用など、シップデータセンターの機能拡充を継続していく。また、現在、船舶データの扱いについて新規国際標準化に向けて提案されている規格(ISO/PWI19847、ISO/PWI19848)にもいち早く対応するとしている。

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