4月29日から30日まで中野サンプラザで開催された“春のヘッドフォン祭”。コルグのブースで、蛍光表示管を使った新しい真空管「Nutube」搭載機器の音を聴いた。
昨年の1月のNAMMショー(楽器や音響機器の見本市)に出展され話題となり、編集部でも折に触れて取り上げてきたコルグの「Nutube」。春のヘッドフォン祭 2016の会場ではNettubeと半導体を組み合わせた、試作品の“パワーアンプ”と“ヘッドフォンアンプ”が出展されており、その音を確かめることができたのでレポートする。
コルグブースには、Nutubeで作ったピラミッドが
蛍光表示管は真空管の仕組みに似ている、だから真空管に変わるデバイスとして、楽器やオーディオ機器にも応用できるはず。Nutubeの開発はそんなところから始まっている。
直熱型双三極管として、アンプのプリ部などに使えるが、蛍光表示管をベースとするため、小型で電池でも動くほど省電力(従来真空管と比べて2%以下の電力で動作)、長寿命(3万時間を超える)といった特徴を持つ。また手作業ではなく、機械生産となるため、安定した生産が可能だという。ノリタケ伊勢電子の三重工場で生産された、純国産のデバイスだ。
コルグブースで展示されていたのは、Nutube採用のオーディオ用ハイブリッド・パワーアンプ試作機。これはD級のICEPower(50SX2)と組み合わせてあり、20W+20Wの出力を持つ。別開催のイベントではこれを「DS-DAC-10R」と組み合わせ、Hi-Fi向けのトールボーイ型スピーカー(おそらくMonitor AudioのPL200II)で再生していた。
DS-DAC-10Rを使ってDSDで保存したアナログレコードの音を聴いてみると、パワー感的には少し足りない感じはあったものの、響きには確かに真空管的な雰囲気があった。特にボーカルの響きが特徴的。高域がふわっと抜けて、ニュアンスが加味される。一方で音のハッキリと立ち上がり、例えば、ベースや弦楽器のアタックがしっかりしている点はデジタルアンプと組み合わせた特徴が生きているように感じた。
合わせてコルグブースで、Nutube使用のヘッドフォンアンプも試聴した。こちらはスイッチで、半導体のOPアンプ(新日本無線の4580)と切り替えられるようになっていた。確かにNutubeに切り替えると、音がほぐれ柔らかくなる。説明員によると、ダンピングファクターの違いにより、やらわらかく懐かしい雰囲気になることに加え、倍音が豊かになり、輪郭も明確に出てくる効果があるようだ。
Nutubeは単体販売もされる計画とのことなので、コンパクトで真空管的なテイストのある機器を自作してみるというのも面白いのではないかと思った。現状、1本5000円ぐらいの単価になるそうで実際に製品に搭載すると、それなりのコスト増もあるだろうが、それに見合った魅力もありそうだ。
別の記事でも書いたように、レトロなサイドウッド付きの筐体から、ほんのりと光るNutubeの光は、真空管のようで未来的でもある。そんな演出感は製品に搭載した際も魅力的だろう。
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