このページの本文へ

ユニークなテクノロジーと米国での実績をNumecent CEOに聞く

軽量でセキュアなアプリケーション配信「Cloudpaging」日本上陸

2016年03月22日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

クラウド時代のアプリケーション配信を提供する米Numecentが、アセンテックをパートナーに、いよいよ日本でも事業を展開する。性能面や拡張性など従来のVDIで抱えていた問題を、ユニークなパッケージング技術でカバーするCloudpagingについて聞いた。

ダウンロードはアプリケーション全体の5%で済む

 2008年創業の米Numecent(ニューメッセント)は、大学発の特許技術を元に開発された「Cloudpaging」というアプリケーション配信製品を提供する。2012年から販売活動を開始し、大手Webサービス事業者が仮想デスクトップへのアプリケーション配信に採用したこともあり、全世界で数百万のユーザーを抱えているという。

 Cloudpagingによるアプリケーション配信は、まずパッケージ化という作業からスタートする。「Cloudpaging Studio」というツールで、配信したいWindowsアプリケーションをパッケージ化し、クラウド上のCloudpaging Serverにデプロイ。エンドユーザーは端末側にCloudpaging Playerをインストールし、Enterprise Portal上からダウンロードしたアプリケーションを利用すればよい。

Cloudpagingのワークフロー

 Cloudpagingの特徴は、パッケージ化されたアプリケーションをクラウド側ではなく、ローカルで実行するという点だ。とはいえ、3.5GBもあるPhotoshopをダウンロードするのは現実的ではない。その点、Cloudpagingであれば、アプリケーションを5%程度にパッケージ化し、ダウンロードサイズを大幅に抑えられる。「Cloudpaging Studioはソースコードを触らず、アプリケーションのレジストリキーやDLLファイルなど、実行ファイルだけをパッケージ化できる。Photoshopであれば、サイズを175MB程度に抑えることができるため、ダウンロードの時間を20~100倍短縮できる」とNumecent CEOのトム・ラガッタ氏は語る。

Numecent CEO トム・ラガッタ氏

 実行ファイル以外のモジュールを使う場合は、クラウド上のCloudpaging Serverからダイナミックに調達する。これをラガッタ氏は、クラウドコンピューティングのリソースをローカルPCのメモリとして利用する「仮想メモリのクラウド化」と表現する。ユーザープロファイルはローカルに保存することができ、他のCloudpaging Playerに移行することも可能。また、キャッシュされたアプリケーションはAES256ビットの暗号化が施されているため、セキュリティ面でも安心だ。

 Cloudpagingのもう1つの特徴はCAD/CAM/3Dなどを含め、パッケージ化に99.9%という高い互換性を持っている点。「全体の10~15%は多少の調整が必要だが、80~85%のWindowsアプリケーションはそのままパッケージ化できる」(ラガッタ氏)とのことで、今までISVや自社開発のものも含め、数万のアプリケーションをパッケージ化してきた実績があるという。

VDIに欠けた柔軟性を補える

 従来のVDIでは、アプリケーションをサーバー側で実行し、ユーザーに画面だけを転送するストリーミングのソリューションが一般的だ。「既存のアプリケーション配信は、長いVGAケーブルでアプリケーションをダム端末に配信していたようなものだ。この方法の弱点は拡張性がなかったこと。アプリケーションが増えると、構成が複雑になり、サーバーリソースも必要になる。ネットワーク経由の配信だと、遅延やパケットロスなどの問題も起こる」と指摘する。

 これに対して、Cloudpagingを使えば、パッケージ化されたアプリケーションはあくまでローカルで実行されるため、VDIのように多くのサーバーは必要なく、オフラインでの動作も可能だ。ラガッタ氏は「CloudpagingもVDIの競合とは考えていないし、実際VDIとの連携事例も多い。しかし、既存のVDIはアプリケーションを柔軟に配信するには向いていないところもある」と語る。リッチなスペックを持つPCとスケール可能なクラウドを前提に、設計し直した新世代のアプリケーション仮想化製品がCloudpagingといえる。

 提供形態はパブリッククラウド上で提供のほか、エンタープライズのプライベートクラウドにCloudpaging Serverを配置し、閉域配信することも可能。CAD/CAM/CAEなどのヘビーワークロードをクラウド化したい製造業や、既存のアプリケーションをセキュアにSaaS化したい金融機関、アプリケーション配布に課題を抱えている教育機関などで導入実績を積んできたという。

 日本ではVDIソリューションで高い実績を誇るアセンテックが販売を手がける。現状はWindowsのみが対象だが、今後はモバイルOSへの対応も期待したいところだ。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード