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VIA Technologies、JapanTaxiと協業し車載PCを開発

2016年03月18日 19時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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猛暑の車内での熱対策や、操作性の統一を図りたい
JapanTaxiの思惑

 ここからはJapanTaxi側の話である。まず山本智也氏が同社の説明とAMOS-825を利用したAIOSの概略を紹介した。

JapanTaxi(株) プロダクトマネージャーの山本智也氏

 JapanTaxiは日本交通の100%子会社で、以前は日交データサービス、その前は日交計算センターという会社名であり、タクシー会社である親会社の日本交通の情報部門を支える位置付けにある。

JapanTaxiの川鍋社長は日本交通の会長として業界活動を行ないつつ、JapanTaxiの指揮を執っている

 同社が(まだ日交データサービス時代に)開発したのが、スマートフォンでタクシーを呼べる「全国タクシー」であり、これをベースに2014年には「スマホdeタッくん」の提供を開始するなど、広く利用されている。

「全国タクシー」の使い勝手そのものは関連記事をご覧いただきたい

 この「全国タクシー」や「スマホdeタッくん」はWindows Azureをベースに構築されており、お客さん側はアプリを自分のスマホに入れておくだけで利用できるが、問題はタクシーの側である。

 昔のように営業所から無線で道を指示していたら、とてもではないが間に合わない。そこで、当初はAndroidのタブレットを各タクシーに設置し、ここでカーナビと連動する「IP配車アプリ」(これはJapanTaxiが作成)を利用して目的地とそこまでの道順を指示する、というシステムを利用していたそうだ。

 ところがさまざまな問題が出てきていた。具体的には以下のとおり。

  • (1) タクシー車内は、特に夏場のダッシュボード付近は簡単に50度を超えてしまうので、タブレットを設置していると温度が上がりすぎでシャットダウンしたり、熱暴走してしまう。
  • (2) 汎用のAndroidタブレットなので、普通にAndroidとしても使えてしまう。なので詳しい運転手は、勝手にアプリを消したり、自分でアプリを入れたり、延々とYouTubeを視聴したりと好き勝手に使われてしまう。
  • (3) いろいろとシステムを自作しているが、全部を統合しようとすると利用していたタブレットでは能力的に足りない。

JapanTaxiが自作したシステム。最初に手がけたのがドライブレコーダーだったそうだ。ちなみにタクシーメーターそのものは計量法の縛りがあって、タブレットでまとめるわけにはいかないそうだ

 特に問題だったのが冒頭の熱の問題である。当時のタブレットでは、性能がギリギリなので、周辺機器を増やしていくにはやや非力という問題もあったが、性能を上げると当然発熱が増えるわけで、さらに条件がきつくなる。

 このAIOS(All-In-One System)としてシステムを統合した理由は、コストと操作感だそうである。既存のタクシーではさまざまな周辺機器をそれぞれ個別のメーカーが勝手に設置していくだけで、操作感の統一性がない。

少し前はよく見かけたタクシーの車内。メーター、無線機、カーナビ、プリンター、決済機などは全部メーカーが異なるそうで、それぞれのメーカーが設置する。例えばボタンの名称1つとってもまちまちで、新人運転手の場合それぞれの機器の使い方を学ぶだけで3日を要するという

 しかもコストも高い。車両代とは別に、こうした電装品だけで80万円近くかかるということで、自分達で作ればもっと安く上がり、最悪同じ程度の価格でも操作性の統一やノウハウの蓄積はできる、ということからの決断だったそうだ。

 ということで、ここからは青木亮祐氏が説明を行なった。まず熱の問題をなんとかするべく、青木氏はタブレットを提供しているさまざまなメーカーに要求仕様を出して検討してもらったのだが、要求を満たせるタブレットを提供できるメーカーは、(VIA Technologiesを含めて)1社もなかったそうだ。

JapanTaxi(株)プロダクトマネージャーの青木亮祐氏

 VIAはViega Tabletという産業向けタブレットを提供しているが、これでも性能と熱の問題をクリアするのは無理だった。ところがそこでVIAは、本体と表示部を分離した方式を逆に提案したのだという。

 「なぜVIA Technologiesと組んだのか」という質問に対し、青木氏は「分離型提案をしてきたのがVIA1社だったから」と答えている。

 AMOS-825の特徴のところで説明したが、AMOS-825の場合、液晶は純粋に表示(とタッチコントロール)だけで、発熱源となるアプリケーションプロセッサーは直射日光の当たらない場所に置かれている。したがって、液晶部の温度が上がっても、問題になりにくい。

 本体に比べて液晶部の動作温度範囲が広くなっているのは、ダッシュボード上という過酷な環境に対応したものというわけだ。これで問題の(1)は解決である。

 1度方式が決まると後は早い。当初はDual Cortex-A9コアの製品を提案したらしいが、それでは処理性能が足りないということでQuad Core化した結果、さまざまな周辺装置を搭載しても処理的に間に合うということになった。

 これで問題の(3)も解決である。下の画像がそのAIOSのデモ機であるが、中央の箱は単純に配線のためだけにあり、本体は箱の上に搭載されたAMOS-825のみである。

右下の液晶は、実車ではスピードメーターなどで示すものを代替している関係か、Arduinoに液晶シールドというお手軽構成になっている

 ただ、もともとAndroidベースのタブレットで作っていたアプリケーションをそのまま乗せかえるだけでは、(2)の問題の解決にはつながらない。

 そこでVIA Technologiesの出番である。画面は通常は左下の画像のもので、それ以外に設定画面(右下)もあるが、以下のカスタマイズをIVA Technologies側で対処してもらうことで、不用意な動作を防げるようになった。

一見普通のカーナビのようだが、左上に「空車」とあるあたりが明らかに専用システム

左上のボタンを押すとこちらに切り替わる

  • ステータスバーをスクロールダウンしても、輝度調整のみが出てくる。そして調整できる範囲も限定的にすることで、いろいろなアイコンが出てきて運転手を惑わしたり、システム設定にアクセスできないようにした。
  • ナビゲーションバーのボタンを制限するとともに、配車アプリ以外のアプリが立ち上がったり、ホーム画面に戻ったりしないように制限する。

 カスタマイズの時間もかなり短いそうで、例えば当初はいわゆる中華フォントが搭載されて出てきたが、JapanTaxiの側で代替フォントを送ったところ、1日で差し変わったバージョンが出てきたそうだ。

 こうした決め細やかなサポートが、組み込みシステムでは非常に重要な部分であり、そうした恩恵をフルに受けられた、というのが青木氏の説明であった。ちなみにAIOSはこれで完成というわけではなく、引き続き機能を追加したり拡充していく予定である。

 また山本氏によれば、AIOSは日本交通向けだけでなく外販もしているということで、VIA Technologiesにとっても日本でのコラボレーションの成功事例として位置づけているようだ。これを弾みに、さらに日本でのコラボレーションを増やしていきたいということなのであろう。

現在は音声認識システムを開発中とか。またAMOS-825にはCAN I/Fを持つほかODB2も接続されており、将来的には運行情報などをどんどんWindows Azure側に蓄積していくものと思われる

 以上、VIA Technologiesの近況を久しぶりにお届けした。もう同社がPC市場に戻ってくることはないが、組み込み市場では引き続き元気、という状況を再確認できたのは喜ばしいことであった。

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