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完全ワイヤレスは素晴らしい、が、音像揺れが気になる

完全ケーブルレスBluetoothイヤフォン「EARIN」に見る革新と課題

2016年03月06日 12時00分更新

文● 四本淑三、撮影● 篠原孝志(パシャ)

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なくしてしまいそうで心配、そして……

 さて、ここまではプロダクトとして完璧です。しかし、やはりその構造上、どうしても避けられない問題があります。

 まず、この姿を見れば誰にでも見当はつくでしょうが、すぐに行方不明になってしまいそうなこと。外したらカプセルへ収納するのが原則です。テーブルの上に置くと転がってしまいます。付属のスタビライザーは転がり防止に有効ですが、カプセルへ収納する際に面倒。だからハウジング外周を多角形にしてくれてもよかった気はします。

 もうひとつ、EARINはワイヤレスでリンクする左右セパレート型のBluetoothスピーカーと同じ問題を抱えています。やむを得ないこととはいえ、どうしても右チャンネルの音が途切れがちです。寸断ではなく、状況によっては数秒間途絶することもたまにあります。

 そして音声の遅延。これも左右チャンネルの再生タイミングを揃えるためにやむを得ないのですが、通常のBluetoothイヤフォンより遅延は大きく、動画の視聴やゲーム向きにはちょっと厳しい。

 遅延が気になる場合は、モノラル接続で使う手もあります。片方のEARINをしまったまま、片方だけを取り出せばモノラル接続になります。これで遅延が劇的に減る上に、モノラル接続の場合は11時間もバッテリーが持つので、片側ずつ使えば、計22時間使えます。

 そして、私が最も気になったのは、ステレオ接続時に音像が揺れ動くこと。数十秒ほどかけて右にパンしていったと思ったら、急にセンターへ戻ってくるというような現象がたまにあります。おそらくチャンネル間で数ミリ秒程度の遅延があり、位相差が生じているのだろうと想像しています。

 同じ形式のBluetoothスピーカーでもこの現象は確認できますが、それほど気にならないのはスピーカーは左右の音が空間でミックスされて届くから。音が耳へダイレクトに伝わるカナル型イヤフォンの場合は、これはかなり気になります。

 これらの問題を解決する一番早い方法は、ふたつのハウジングをワイヤーでつなぐこと。つまりハウジング間のワイアーの存在が気にならないのなら、一般的なBluetoothイヤフォンでいいのです。

 EARINの左右のリンクに起因する現象は、何かの悪条件が重なった際に起きるもののようで、常時ではありません。しかし絶対に起きないわけでもない。それを理解した上で割り切れるなら、ウェアラブルオーディオデバイスの未来と、優秀なプロダクトデザインが堪能できるEARINはオススメできます。あとはなくさないように気をつけるだけ。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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