ここ数週間にわたり、政府主導で携帯電話の利用料を下げさせるニュースが飛び交っている。安倍首相が総務大臣に指示するほどのことなので、2016年にはなんらかの変化は起こるとは思うが、本当に安くなるのだろうか。格安SIMを使わなくても格安なスマホライフは実現するのだろうか?
格安SIMほど安くなるのは期待できない
現在報じられていることを総合すると、全体的な大幅値下げが行なわれるのではなく、月額利用料が5000円以下の選択肢を作り、5000円以下とされるプランでは月間の通信容量が1GBにする、いうことのようだ。
現在、3大キャリアはほぼ横並びで、そのうちNTTドコモでLTEのスマートフォンを持つ場合、月額基本料が2700円、2GBのパケット代が3500円、プロバイダーが300円の月額合計6500円+ユニバーサルサービス料+消費税の7022円が基本的な最低ライン。これには「国内音声通話が定額」という通話が多い人には大きな特典があるが、金額だけ見ればかなり高額だ。
一方、最近登場したプランで、通話が無制限でなく5分間以内の通話だけが無料という基本料金プランがある。それを選択した場合、データ定額が3GB以上(au)または5GB以上(au以外)しか選べなくなるため、データ通信の容量はアップしても月額基本料が1700円、5GBのパケット代が5000円、プロバイダーが300円の月額合計7000円+ユニバーサルサービス料+消費税の7562円となり、通話も通信もあまり使わない人にとってはかえって高額になってしまう。
現在がこのような料金体系である以上、仮に「1GBで5000円を少し下回る」というプランが出たとしても、現行プランのバリエーション拡大の範囲内と考えることもできる。
格安SIMは、通話料はまったく含まれないものの、データが3GBで音声通話付きなら大手で1730円。多少通話をしたとしても「1GBで5000円」とは比較にならないほど安い。もちろん、格安SIMの高速通信が必ずしもキャリアのそれと同じ速度が出るとは限らないことは前提である。
「実質0円」は果たしてお得な割引なのか?
一方、新聞などでは、現在のスマートフォンの販売を「実質0円の乱売」という表現で報じている。しかし、実質は実質であって真のゼロ円ではない。
携帯電話の販売における「実質0円」とは、2年間使った場合に、端末価格と2年間の割引総額が同じで、相殺して0円となることを言う。
つまり、格安SIMとくらべて高額な「月額利用料金」を2年間払うから、端末がタダでもらえるということにすぎないのだ。
何年も前、話題になった携帯電話を0円や1円で販売していたのと変わらないように思えるが、違う点がある。2年間契約を続けなければ割引がすべて受けられないため、短期で解約や指定プランから外れてしてしまえば本体代金、しかも定価の金額のほとんどを自分で払うのと同じことになる。
携帯電話事業者がどういう意図でこのような割引制度を実施しているかは不明だが、格安SIMが通信サービスを安く提供できる実態からすると、本体代金を実質的に0円に見せかけるために、月額利用料をその分高く設定しているのでは? という穿った見方もできるのである。
また、今までも似たようなことがあったとおり、今後、プランによって割引額が変わる可能性がある。もし「1GBで5000円」というプランが登場した場合、このプランだけ割引額が少ないということになれば、何のために安いプランが出たのかわからなくなってしまう。
なお、携帯電話の格安店では実質0円ではなく「一括0円」という表示も多く見かける。同じ0円でも実質と一括は大きな違いがある。
実質0円と一括0円の違い
一見、一括0円のほうが特典が少ないようにも見えるが、同じ機種なら基本的に月々の割引サービスは同等。本体代金が7万円の同じ機種のスマートフォンの場合、実質0円と一括0円は総支払額で7万円の差があるということだ。
(次ページへ続く、「Nexus 5Xの値段に注目すると見えてくる 実質0円なのに割高な理由」)
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