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『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第12回

田中浩也准教授(慶應大学SFCソーシャルファブリケーションラボ代表)、青木俊介氏(ユカイ工学CEO)が語る

Makerムーブメント最前線~これまでの10年とこれからの10年

2015年12月19日 18時00分更新

文● 二瓶朗 編集●村山剛史/ASCII.jp

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Makerムーブメントを下支えする
企業のオープンイノベーション

田中 急に話は変わりますが、ユカイ工学って今人数何人なんですか?

青木 正社員が12人ぐらいですね。Makerムーブメントって言われて皆さんに注目されているおかげで、ちょっとしたモノを作りたいというお話が、この2年ぐらいでようやく来るようになりました。

遠藤 僕も、企業とミーティングしていると「こんなプロトタイプ作りました」というモノを見せてもらうことがあるんですよね。誰が作ったんですか? って聞くと「ユカイ工学さんが……」ということがあります。

青木 そうですね。昨今「オープンイノベーション」を指向していらっしゃる企業は少なくありません。企業サイドから意見を出してもらい、ワークショップ形式で試作し、評価の高かったモノを「コンセプトモデル」として作ります。

遠藤 企業がユーザーから意見をもらい、物理的な部分を御社で形にするということですか。

青木 そうですね。たとえばこれは「FUMM(フーム)」という、子ども用のIoTシューズです。「散歩を楽しくする」というコンセプトで、横断歩道を歩くと白帯とアスファルトで違う音が出るとか、滑り台を降りると高低差で音が変わるといった機能が付いています。

 こういったモノを、ハッカソンに参加していたチームと一緒に「コンセプトモデル」に仕上げていきます。

散歩が楽しくなる子ども向けIoTシューズのコンセプトモデル

遠藤 ファブ運動周辺って今後どうなっていくのでしょう? ファブラボ的な市民工房が増えてきて、モノづくりの場も道具も与えられ、ネット上でデータまで交換できるようになりましたと。この後は、ソフトウェアに起きたオープンソース化などがハードでも繰り返される?

青木 国内だと、元々ホビイストの層が厚くて、そういう人たちが新しい人を巻き込んでファブ的な活動が受け入れられてきた感じがします。

田中 これまでMakerムーブメントって3パターンあると言われてきました。完全に「趣味」でやっている人と、完全に「ビジネス」でやってる人。そして趣味っぽく始めるんだけど上手くいったらビジネスにしたい、あるいはメインの収入ではなくてもスモールビジネスにしたいと思う人。

 ただ、「生活(趣味)」か「ビジネス」かという線引き自体が無効になってきているし、クラウドファンディングなどもあって、従来の資本主義とは別の、もうひとつの「共創型・共有型の経済」が見えないところで着々と進行しているという感触を持っています。

青木 確かに。変わってきたのは、大企業の扉が開いてきたところだと思います。僕たちにとっては一番面白いな、と思ってるところです。

遠藤 今までは、大企業の中で大企業の方法でモノを作ってきたんだけど、最近はMaker的な外から丸見えで、ある種ベンチャー的な動きが見られるようになったと。

青木 クラウドファンディングのサービスをソニーが始めたのも面白いです。ほかにも、チップメーカーが直接Maker向けのボードを出す、というような動きもあります。「Raspberry Pi」もそうですよね。

 大企業が利益度外視でチップを提供して、ツールが広まったりしている現在こそ、とても面白い瞬間なのかなって思うこともあります。ちょっと前まで、大企業のモノづくりのノウハウを活用するというのは、ものすごくハードルが高かったので。

 これまでは、企業に単身乗り込んで試作品を口八丁手八丁でタダで使わせてもらうような、ある種の魔法使いみたいな人の活躍があって、そこで初めて大企業のノウハウが明らかになったりしました。

 しかしいまはMakerムーブメントによって、大企業側もオープンになりつつあるということは大きな進歩かな、と。

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(次ページでは、「10年後「モノをソフトウェアのように作れる」ようになる」)

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