かんなくずのように透けるほど薄く削った木製振動板
では具体的に何をしたか。ひとつは振動板自体の軽量化。WOOD 01/02の振動板は中央にウッドシート、その周囲にダンピング用に使うフィルム振動板を組み合わせて構成されている。この両方の軽量化に取り組んだ。
ウッドシートの厚さは、より高度な削りだし技術を確立し、50μmに削減。フィルム振動板もPET素材からより剛性の高いPEN素材に変え、厚さを23μmから16μmに薄型化した。これにより、振動板の重量は0.04g台と約3割軽くなり、45kHzまでの高域を忠実に再現できる能力を手に入れた。
一方で磁気回路も強化。新開発の「ハイエナジー磁気回路」は1テスラを超える磁束密度を持つ。ネオジウムマグネットを開発当初より、3割ほど大きくしたほか、磁気回路のプレート形状も変更してボイスコイル周辺に磁束が集中するよう改善している。これにより、単に駆動力が上がるだけでなく、ボイスコイルが前後に動く際の力もより均等に近づき、音の歪みが少なくなった。
加えて、筐体自体の振動による音のにごりを防ぐため、部品選択も配慮。外装部分に用いた積層強化木はそのひとつで、厚さ1㎜の無垢材を圧縮して一体化。これを垂直方向(層の重なりが見える方向)にカットして使用している。振動板の後方には、リング状に加工したウッドプレートを配置。さらにABS樹脂+グラスファイバー製のユニットフレーム、高強度ポリアミド樹脂製のユニットフォルダー、真鍮製のブラスリングなどを組み合わせている。異なる素材を組み合わせることで、ユニットからの振動を整え、音質をチューニングしているという。
さらにWOOD 01のみの特徴として、ABS樹脂製のバッフルに木製(メイプル)製のウッドパーツ、さらに響棒、整振ウッドプラグなどの音響ウッドパーツを追加している。また、高品質な音響用ハンダを使用することで、音の濁りが少なく、余韻や奥行きまで繊細に表現できるよう配慮しているという。