「速い」「美味い」「美しい」で
イタリア人は手を抜かない
ローマからは鉄道で北上した。イタリアはフランスやドイツと並ぶ鉄道先進国で、ローマを挟んで北はミラノやトリノ、南はナポリまで、高速専用線が通っている。実は世界では日本の次に、ヨーロッパで初めて高速専用鉄道が通ったのは、フランスのTGVではなくイタリアのアルタ・ヴェロチタ(イタリア語で「高速」の意味)だ。現在南はナポリから北はトリノまで、主要都市間は高速鉄道線でつながっていて、一区間はだいたい1時間から2時間弱といったところである。ナポリ~ヴェネツィアといったような長距離でもない限り、イタリア国内の移動は鉄道が快適だ。
そういう事だから、やっぱり列車内でもスピードテストをしてみたくなるのはガジェ夫くんのサガだ。ローマ~フィレンツェ間を含むフィレンツェの3地点での測定結果をお伝えする。ちなみに列車内テストは、ローマの中央駅にあたるテルミニ駅を出発して30分後くらい、時速250キロで疾走する「フレッチャロッサ号」(日本での「のぞみ」や「はやぶさ」に相当する主要都市間速達列車。イタリア語で「赤い矢」を意味する)での計測である。
フレッチャロッサ車内
(テルミニ出発から30分後くらい)
- TIM: 4.59/0.25Mbps
- Vodafone.it: 2.56/1.16Mbps
- 3: 0.24/0.30Mbps
- wind: 0.47/0.25Mbps
フィレンツェ・シニョリーア広場
(ダビデ像前)
- TIM: 56.47/28.54Mbps
- Vodafone.it: 51.77/16.58Mbps
- 3: 6.65/0.57Mbps
- wind: 1.34/0.87Mbps
フィレンツェ・サンタマリア・ノヴェッラ駅
近郊のホテル
- TIM: 66.25/22.70Mbps
- Vodafone.it: 37.88/29.88Mbps
- 3: 39.38/14.61Mbps
- wind: 15.21/3.23Mbps
列車内の測定はご覧のとおり。高速線は人口密集地から離れているということもあり、やはり数字はふるわない。そんな中でもTIMは一定の速度を出したあたり、元国営の意地という感じがする。インフラ整備の差がくっきり表れた結果と言えるだろう。安定してこの通信環境を確保できる訳ではないが、4Mbpsくらいあれば、目的地のホテルの位置や観光情報を収集するくらい問題なさそうである。
さて、ローマで既に速いとは感じていたが、フィレンツェでは「3」とwindが覚醒して全キャリア10Mbpsを超える速度ででガンガン通信しまくった。特にホテルでは、windの下りで15.21Mbpsという「爆速3G」がまたしても観測された。
しかし速い、それにしても速い。ローマではVodafone.itがチルコ・マッシモで記録した42.82/22.59Mbpsという結果が最速だったが、フィレンツェでは中央駅にあたるサンタマリア・ノヴェッラ駅近郊のホテルで、TIMが下りの数字を大幅更新してきた。結果はなんと驚きの66.25Mbps! 上りは同じ地点で、Vodafone.itが29.88Mbpsを記録している。正直この数字が出てきた時には、それまでと比べてあまりに次元が違うのでクラクラした。
筆者が好きな某ネット動画に「速いもの、美味いもの、美しいものにおいて、イタリア人は手を抜かない」なんていう台詞がある。ワインで有名なトスカーナ州の州都で毎夜ワインに舌鼓を打ち、同時にルネッサンスの中心地であるこのフィレンツェという街でミケランジェロの傑作「ダビデ像」を眺めながら、TIMの56MbpsやVodafone.itの51Mbpsなんていう数字を目の当たりにすると、思わずあの台詞が浮かんできた。もはや筆者にとって、この台詞は格言である。