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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第147回

SNSの強みを生かした展開があるかも

ケチと言われたLINE MUSICが教えてくれた日本の音楽の未来

2015年09月12日 12時00分更新

文● 四本淑三

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以前よりレコード会社の意識も進んだ

―― 各サービス、すでに低価格攻勢を始めていますが。

高橋 我々も追従しようという考えもないではないですが、そもそも課金するかどうかという部分でハードルを感じている方がいらっしゃるので、いま価格の違いが、それほどの違いになるのか。まったく同じサービスだったら安い方が選ばれると思いますが、チキンレースみたいに下げていってもあまり意味がないと思います。

―― LINE MUSICにも学割で30日間を300円/20時間という格安プランがあります。レーベルさんを説得するのは大変だったんじゃないですか?

高橋 そこを同意いただけたのは、若年のユーザーに関して課金の習慣がなくなりつつあるという危機感ですね。そこに届くのは、もしかしたら学割じゃないかと。そういう我々の仮説に乗っていただいて。LINE MUSICだけでアーティストが完全にペイすることはあり得ません。そこからCDを買ってもらう、ファンになってコンサートに来てもらう、グッズを買ってもらうというところの入り口にあるのが、このサービスなんです。そういう将来性を見ていただいたと思っています。

―― そういう意味では、海外にはSpotifyのようにフリーミアムモデルを採るサービスもありますが。

レーベルとの交渉にはなかなかの時間がかかったという

高橋 端的にいうと海外ではパッケージが死んじゃってるという業界のコンセンサスがある。CDも売れないし、iTunesだけでも商売ができない。違法アプリも流行っている。それを打開するために、まず無料で聴いてもらって、有料サービスに誘導する。そういう施策がハマって、海外で広まっていったわけです。ただ日本においては、それはまだ時期尚早だという判断ですね。端的に言うと、日本はCDが世界で一番売れている国なので。

―― とはいえ、将来的には選択肢として考えておく必要もあると思うのですが。

高橋 常に一定量がタダで聴けるというのは、レーベルにとって受け入れがたいんじゃないでしょうか。対価が低いのもありますから、アーティストさんを説得する材料としても筋が通らない。ただ、これから状況は厳しくなっていくのは見えるので、サブスクを始めた結果がどう出るかで、次の施策が変わってくると思います。

―― そもそもレーベル側は今までサブスクリプションに抵抗があったわけですよね。今の段階で揃ってやっているのはなぜですか?

高橋 それも危機感だろうと思いますね。日本にもサブスクリプションを根付かせなきゃマズイなという。ダウンロードとCDがどんどん下がってきて。その中で、新たな柱を作らなければいけない。そうした危機感と、海外で得られた知見から、タイミングが合ったのかもしれないですね。でもSpotifyじゃないよねという、解答探しをしているんじゃないかと。

―― 以前とは状況認識が変わったということですか?

高橋 それは新曲が出始めたことに現れていると思いますね。それが旧譜しかなかった過去のサブスクリプションサービスとの違いかなと思っています。今回レコード会社さんも意識が進んだというか、仕掛けとして今回は本気でやろうという現れだと思います。

(次ページでは、「LINE MUSIの強みは?」)

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