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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第319回

Z170でDDR3が使えるのはなぜ? インテルチップセットロードマップ

2015年08月31日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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Z170チップセット以外では
DDR3が動作しない可能性あり

 もう少し話を細かく説明したい。ここからの資料は今月開催されたIDFにおける、“Overclocking 6th Generation Intel Core Processors!”というセッションで公開されたものである。

 もともと8月に発表されたSkylake-SとZ170という組み合わせは、オーバークロックを前提にした構成の製品なので、CPU側は倍率アンロックのKモデルであるし、チップセットの側も倍率などが自由に設定出来るようになっている。

Skylake-SとZ170チップセットの組み合わせでは、いろいろな設定がアンロックされる。問題はこのZ170の一番下の項目である

 特に倍率に関してはかなり自由度が高くなっており、ベースクロックは1MHz刻みで変更できるようになっており、メモリークロックも100/133MHz刻みで変更可能である。

Skylakeの世代では、GPU側の動作周波数変更が可能なのはZ170のみとされる。もっともこのセッションが行なわれた時点ではZ170しか発表されてないことを考えると、これはあくまで8月の時点での話で、H170その他が発表されるとまた変わる可能性もある

 とにかく自由度が高いのがSkylake世代の特徴である。クロックツリーの構造がこちらで、PCIeやDMI向けのクロックとその他が別々のツリーの形で提供されていることがわかる。

Skylakeのクロックツリー構造。PCIeおよびDMIのみ、CPUとPCHの両方で利用されるので、これに関しては両方で同期を取る必要があることからPCH側で生成され、一方その他はCPU内部で完結するのでPCHからはBCLKのみを供給、実際の倍率はCPU内部で変更という形になる模様だ

 これにより、オーバークロックの際に、それぞれのコンポーネントに望む動作周波数を設定しやすくなった。

 さて、これに絡むのが電圧アンロックである。オーバークロックも、ある程度までは動作マージンがあるから電圧をあげなくても引き上げが可能である。ただその先は当然ながら定格外で普通には動作しない。

 幸い(?)にもCMOSの場合、動作電圧を上げれば動作周波数が引きあがるという特性があるので、電圧を引き上げてより高い動作周波数を可能にするわけだが、Skylakeでは電圧レギュレーターのFIVR(Fully Integrated Voltage Regulator)が搭載されなくなった。

 その関係で、電圧制御そのものはCPUの外に置かれる形になり、これのコントロールはCPUからPCHにリクエストを送り、PCHがPMIC(Power Management IC)の制御を行なう形で実装される。

 この電圧制御だが、コンポーネントによってそれぞれ供給される電圧が異なっている。下の画像にあるようにVDDQはDDR4の場合には1.2V、そしてDDR3の場合には1.35Vが定格である。

コンポーネントによってそれぞれ供給されるVGTとVCoreが異なっているのは、それぞれ別の動作周波数で動作可能であり、オーバークロックの度合いも異なるから掛けるべき電圧も異なってくる、というあたりが理由であろう

 ということで本題に入ろう。そもそもDDR3とDDR3Lの違いの一番大きなものは信号電圧(1.5V/1.35V)である。

 厳密に言えば、例えばMicronの4Gb品の中で、MT41J512M8RH-093に(1.5Vの4Gbit/2133MT/s品)と、MT41J512M8RG-093(1.35Vの4Gbit/2133MT/s品)を比較した場合、パッケージ寸法はDDR3が9×10.5mm、DDR3Lは7.5×10.6mmと微妙に異なる(BGAの物理的な配置そのものは同一なので、DIMMへの実装に関しては互換性がある)。

 ほかにも、若干電気的特性が異なる(DQS,DQS#, TDQS,TDQS#の各信号の容量は、DDR3が最小1.5pF、最大2.1pFなのに対し、DDR3Lは最小1.4pF、最大2.1pFとされる)といった違いはあるのだが、ほぼ同等である。

 加えて言えば、信号電圧の最大定格はDDR3/DDR3L共に-0.4V~+1.975Vの範囲となっており、DDR3Lを1.5Vで駆動することそのものは可能である。

 もちろん、その場合消費電力は増えるので明らかにDDR3Lのメリットはなくなる。また発熱も増えるので、むしろDDR3をそのまま使ったほうが適切だとは思うが、とりあえず動作はする。

 ということで話を戻すと、今回のKモデルのSkylake+Z170チップセットの場合、定格は1.35Vだが、実際は1.5Vに昇圧することは問題なく、可能と思われる。

 これに関しても、システムの起動時にまずSPDを読みに行き、ここのパラメーターに応じて1.35Vのまま、あるいは1.5Vに変更という判断を行なった上でDDR3のアクセスするようにBIOSのプログラムを記述することは容易である。

 問題になるのは、この特徴がKなしのCPU、あるいはZ170以外のチップセットでも可能か? ということである。要するにインテルがこうした電圧を無視する機能をKなしモデルのCPUでも許す、あるいはZ170以外のチップセットでも設定可能にしているのであれば、Kモデル以外のCPUでもDDR3で利用が可能になるだろう。

 実のところこのあたりはインテルが製品のデータシートを公開してくれれば一発でわかるのだが、いまだにSkylakeやZ170のデータシートが公開されていないので、現時点ではなんとも言えないところだ。

 なお、コンシューマー向けはこれでもいいのだろうが、ビジネス向けのQシリーズチップセットでは、DDR3の利用は明らかにインテルの保障範囲外の使い方になるので、おそらくサポートされないと思われる。

 微妙なのがSkylake Celeron+H170という組み合わせで、価格を考えればDDR3をサポートしたほうが「今は」有利だが、2016年に入るとDDR3とDDR4の価格の逆転が急速に進むと思われるので、案外サポートしないままに終わるかもしれない。それ以前に、そもそもSkylake Celeron+H170でDDR3の利用が可能かどうかが現時点ではわからない。

 ただ筆者が試した感想では、DDR4にすると確実にメモリー帯域が上がるので、内蔵GPUを使う場合は確実に有利だし、消費電力も低く抑えられる。したがって予算的に非常に厳しくてDDR4を買い足すゆとりがない、というケース以外はDDR4をお勧めしたいところである。

※お詫びと訂正:記事初出時、Skylake Celeron+H81とありましたが、正しくはSkylake Celeron+H170になります。記事を訂正してお詫びいたします。(2015年9月23日)

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