CanonicalのUbuntuスマートフォンが8月初頭、全世界に門戸を開いた。Ubuntuスマートフォンを製造するスペインBQがグローバル向けのオンラインショップを開設し、同社のUbuntuスマートフォン2機種が169.90/199.90ユーロで購入できるようになったのだ。だが、米国では実質2Gまでの対応となり、本格的なグローバル展開としては物足りなさが残る。
BQがグローバルストアをオープン、2機種を発売
Ubuntuスマートフォンは、これまで主に欧州市場で展開されてきた。2月にBQは初のUbuntuスマートフォン「Aquaris E4.5 Ubuntu Edition」を、そして6月には2機種目となる「Aquaris E5 HD Ubuntu」をオンラインで発売。ともに地域は欧州に限定したものだった。
Ubuntuを開発するCanonicalは、BQのほかにも中国のMeizuとも提携しており、Meizuは5月に「Ubuntu MX4」を中国国内の開発者向けにリリース。6月に欧州市場での販売も開始した。
そして今回、BQがオンラインストアをグローバルに開放した。これにより欧州以外のユーザーもここで「Aquaris E4.5 Ubuntu Edition」と「Aquaris E5 HD Ubuntu」の2台を購入できる。価格はそれぞれ169.90ユーロと199.90ユーロだ。
これでCanonicalは重要なマイルストーンとしていた米国ローンチを果たすことになるが、もっともそれは制限つきだ。というのも、両機種ともにLTEに対応しておらず、HSPA+/GSM止まり。しかも3Gの対応周波数帯は900MHzと2.1GHz。つまり、米国では2GとWi-Fiまでの対応となり、これではスマートフォンとして快適に利用できるとは思えない。
これに対しCanonical側は、今回のローンチを”米国でUbuntuスマートフォンを使ってみたいというコミュニティーに向けたものであって、一般ユーザーを狙ったローンチではない”と位置付けている。
キャリアや企業がコンテンツを提供できるScopesと
コンバージェンスで訴求
Ubuntuスマートフォンは、人気LinuxディストリビューションのUbuntuを土台とし、AndroidやiOSとは異なるユーザー体験を持つ。その部分で最大の特徴はScopesだろう。
今日のニュース、天気、音楽などのテーマに合わせて、ウェブからコンテンツを集めて表示するもので、メーカーやオペレーターなどは簡単にコンテンツを提供できる。これは、アプリが少ないというエコシステム問題に対する、Ubuntuからの回答となる。
Ubuntuスマートフォンにおいて、もう1つ重要のはCanonicalにとってはコンバージェンス戦略の一部であるという点だ。同社は単一のコードでデスクトップ、スマートフォン、そしてサーバーが動く世界を描いており、クラウド、モノのインターネット(IoT)までを含めた戦略を固めている。
デスクトップで利用するUbuntuをタブレット/スマートフォンでもシームレスに利用するというビジョンで、ここはAndroidやiOSとは異なる。どちらかと言えば、MicrosoftのWindows 10の方がこのビジョンに近い。
そこで想定されるのが、企業ユーザーだ。Ubuntuはデスクトップで行政機関などの事例がある。実際、Canonicalが2013年7月に展開したクラウドファウンディングプロジェクト「Ubuntu Edge」では、端末100台の8万ドル枠にBloombergが入札した。Bloombergは、「エンタープライズコンバージェンスとモビリティー向けに単一のデバイスソリューションを提供する」というビジョンを評価していた。
なお、エンタープライズ市場では、少し前にIBMによるMacとiOSへの強力なプッシュが大きなニュースとなった。これは2014年7月のIBMとAppleとの提携に基づくものだが、モバイルとクラウドによって、エンタープライズ市場が様変わりするという予想も極論ではなくなってきた。一方で、同時期に次々に明らかになったAndroidのセキュリティー問題は、Androidのエンタープライズ進出に少なからず影響を与えたという見方はできる。
(次ページでは、「そんなUbuntuスマホだが、販売台数はいまだ明かされず」)
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