100案から残った6つのアイディアとは
8月7日に行われたTOMODACHIサマー2015の最終プレゼン。残ったのは以下の6つのアイディアでした。発表順に、短評とともにご紹介します。選考から漏れたプランも含めて、すべてゼロから1週間ちょっとで、集中して作り上げた力作揃いでした。
●「伝えたい、宮城の魅力」(宮城県・仙台市)
震災によって地元のコミュニティの連帯感が薄れている点を解決するため、子どもたちに地元の文化を伝えるワークショップの活動を通じて、世代間、地域間を結びつける試み。プレゼンでは、「ずんだ」の由来を伝える紙芝居を作って紹介していました。
●「じーちゃんばーちゃん大作戦 with 孫」(岩手県・奥州市)
自分が通っていた中学校が2年後に廃校になることをきっかけに、なんとか中学が繋いでいた地域コミュニティーを生かそうというプロジェクト。家庭科室や音楽室、体育館などの設備がある学校と、文化や知恵を伝える事ができる高齢者という地域のアセットを最大限に生かす枠組みには脱帽でした。
●「ハロー・マイストーリー」(岩手県・葛巻町)
震災エリアでの心のケアに関するプロジェクト。同じ経験をした人同士による「ピア・カウンセリング」の枠組みを提案していました。葛巻町をカウンセラーの研修拠点として活用し、心の問題に取り組む拠点を目指すとしています。
●「メモリーズ・オブ・東北」(福島県・福島市)
京都での避難生活を通じて、来たる“次の震災”への備えが非常に手薄であることに問題意識を持ち、「もう誰にも、自分と同じ思いをして欲しくない」という思いからのプロジェクト。懸念される南海トラフ地震の被害想定エリアである近畿圏には、実に2000人もの東日本大震災の被災者が避難生活を送っていることから、彼らの体験談を共有する「語り場」活動を提案。
●「LIFE」(岩手県・大槌町)
津波の被害で街に何もなくなった大槌町では、今も仮設住宅での生活が続いています。震災で家族を失い、孤独な避難生活を送っているなかで、高齢者の仮設住宅での孤独死は見過ごせない「自分の問題」。そこで、高齢者宅の買い物代行とコミュニケーションの活動を提案。自治体からの協力を仰ぎ、孤独死ゼロを目指すとしています。
●「Mapping HEROS」(福島県いわき市)
震災以降、人口で上回っている福島市よりも刑事事件が多くなってしまったいわき市。街の安全が保たれていないことに問題意識を持ち、若者ならではの方法で安全な環境を作り出そうというアイディア。不審者などの情報を地図上に投稿・閲覧できるウェブサイトと、これらを速報するTwitterアカウントを組み合わせて、地域の人々に安全情報を共有する仕組みを提供する計画です。
最終プレゼンの6案は、どれもきちんとしたアクションプランに落とし込まれており、スケジュールや予算、協力を募る対象、そしてプランの持続性まで考えられたものでした。
このなかで、審査員がベストプランに選んだのは、「LIFE」でした。
自分のストーリーをアイディアと行動のきっかけに
今回の個別のプレゼン、そして最終発表は、いずれも、胸を打つ、面白いアイディアばかりで、少し驚くほどでした。
アイディアの発案をグループではなく個人にしたことが昨年からの大きな変化でした。これによって、震災を体験したひとりひとりの経験が、直接的にプロジェクトに反映されており、実感あふれたプランとプレゼンが展開されたのではないか、と思います。
いずれのプレゼンにも、自分の経験やこれまで取り組んできたことが含まれており、なぜその人が、そのアイディアを考えたのか、ということがきちんと伝わるのです。だから「面白い」プレゼンばかりだったのではないでしょうか。
8月11日には3週間ほどの米国滞在を終え、それぞれの地に帰って行く100人。参加した高校生たちは口々に、「米国での体験を友達に話して、一緒に活動に取り組みたい」と話していました。
初年度の300人、以降毎年100人ずつ、2015年まで600人の「TOMODACHIサマー経験者」が東北地方に散らばっていることになります。彼らの活動が、地域の問題を長期的に解決していく日も遠くないかもしれません。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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