軽快に使えるカナル型モデルは
ハイコストパフォーマンスモデルに注目
確かにオーバーヘッド型の人気は高まっているが、屋外で気軽に音楽再生を楽しむという意味では、あくまでカナル型などのインイヤー型が王道だ。
カナル型の高音質モデルで注目度の高いBA(バランスド・アーマチュア)は、その音のよさで大人気だが、20kHz以上の高域再生の実現が難しく、BAユニットだけの構成でハイレゾ対応マークをつけた製品はない。
一方、大型ヘッドフォンなどでも使われるダイナミック型のユニットは、オーバーヘッド型のモデルと同じく超高域再生の実現が可能で、ダイナミック型ヘッドフォンのモデルでハイレゾ対応マークをつけた製品が登場してきている。
しかも、多くは人気の高い価格帯である1万円台のものが多い。ハイレゾ再生に興味がある人にとっても気になるだろう。カナル型ヘッドフォンとして、ここでは2モデルを取り上げた。
メカっぽい無骨なデザインも魅力!
お買い得感のあるエレコム「EHP-CH3000」
エレコムの「EHP-CH3000」は、実売価格1万1000円前後というお手頃な価格もさることながら、メカっぽいディテールを活かした独自のデザインが印象的なモデル。
12.5mmのダイナミック型ドライバーは、振動板のMLF(超多層フィルム)を採用。MLFとは数百ものポリエステル樹脂フィルムを積層したもので、これにラジアル構造のリブを設けた高剛性振動板としている。
さらに、ユニットの前方のネオジウムマグネットを備えることで磁束漏れを防止し、振動板の振幅スピードを向上するなど、斬新な設計を採用している。この結果、再生周波数帯域としては5Hz~40kHzを実現している。
軽量コンパクトなカナル型だが、ハウジングはやや耳から飛び出す格好で、かさばるほどではないが、髪に触れたときに手に当たってしまうこともあった。装着感に関しては3サイズのイヤーチップが付属しているので、好みに応じて装着するといいだろう。
試聴はオーバーヘッド型と同じく、AK120IIで行なった。最初は痩せた音にびっくりしたが、これはどうやらスマホ操作用のリモコン/マイクのボリュームが絞られていたため、価格を考えれば仕方がないがボリュームはスマホ側のボリュームをコントロールするものではなく、アナログ的なボリューム機構で音質的には少々不安がある。
だから、基本的にはスマホ側で適切な音量に調整しておき、リモコン/マイクにあるボリュームは装着したまま音量を落とす場合など、ミュート(消音)的に使う程度にしておき、通常はボリューム全開にしておいた方がいい。
きちんとした状態で再生すれば、落ち着きのあるなかなかいいバランスの再生音が楽しめる。高域はややおとなしい感触だが、ヴァイオリンの弦の艶もきちんと出ているし、過度に華やかになりすぎないので聴き心地がいい。
ボーカルもゆったりとした落ち着いた感触で、ニュアンスの豊かな上質な再現だ。音の輪郭はややソフトだが、ふくよかな感触があり、聴き心地のよさもあって柔らかく包容力のある鳴り方をする。あまり高解像感は感じないが、きめの細かな絹のような感触で個々の音を質感豊かに描き出す。
「Ring Your Bell」は、やはりボーカルのしっとりとした表情の美しさ。柔らかさだけでなく歌声の力強さや、中低域のエネルギー感もでているため、生き生きとした声になる。
ドラムのリズムなどはことさらにパワフルな鳴り方をしないが、リズム感はしっかりとしていて、非力さは感じない。声を中心とした中音域が充実しているため、どんな曲調のものでも、そつなく再現できる。このまとまりの良さとボーカルの表現力を考えれば、1万円ちょっとの価格としては異例だ。ハイレゾ対応でもあるし、入門用としてはベストなモデルのひとつと言える。
(次ページに続く、「ウッドドーム採用の末弟モデル、JVC「HA-FX650」」)
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