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未来を描くスタートアップとマイクロソフトのストーリー 第2回

視線追従でディープな没入感を実現する新世代HMDがいよいよラウンチ

情熱のゲーム女子と百戦錬磨のエンジニアが描くFOVEの仮想現実

2015年06月18日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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仮想現実を操作し、さらにキャラクターと心を通い合わせる

 小島さんがSCE在籍時に取り組んでいた期間も合わせると、FOVEの開発は3年目に突入している。現在はプログラムとハードウェアを3カ月ごとに更新するペースだ。

 「今は、誰がかぶっても同じ精度が出せるようにロバスト性を追求している段階です。今年の夏にはプロトタイプ、秋には工場での生産に取りかかりたい」(小島さん)

 5月にはクラウドファンディングサービスの「Kickstarter」にて、FOVEの出資受付をスタート。今後はOculus Riftのように、まずは製品をソフトウェア開発者に使ってもらい、SDKを使える人を増やしていく戦略だ。コンシューマー向け製品はその先となるが、ターゲットユーザーは、HMDに対する抵抗感の少ないハードコアゲーマーだという。さらに、ゲームに限らず幅広い応用範囲も考えている。

 「HMDに対応したゲームであれば、誰でも楽しめるようなプロダクトを狙っている。またリアルタイム視線追従の技術を使えば、たとえばALS(筋萎縮性側索硬化症)などの病気で手が使えない人でもピアノを弾くことができるようになるかもしれない」(ウィルソンさん)

 仮想現実の中でより繊細な表現を実現したい、という思いもある。かつて小島さんが目指したように、ゲーム内のキャラクターと視線を通じた感情的なインタラクションが発生すれば、より現実との境目はあいまいになってくるだろう。

 「次世代のゲームでは、ユーザーの視線から敵が攻撃を先読みしたり、キャラクターの胸ばかり見ているユーザーに『どこ見てるのよー!』と叫んだり(笑)、ゲーム内のキャラクター側が、視線でユーザーの感情を推測できるようになる」(小島さん)

「ゲーム内のキャラクター側が、視線でユーザーの感情を推測できるようになる」(小島さん)

 もちろん、こうした世界を生み出すためには、FOVEだけではなくゲームデザイナーのアーティスティックな演出力も必要となる。「ハードウェアを活かすような、魅力的なコンテンツをいかに作ってもらうのかが、今年、来年の課題」だと、小島さんは締めくくった。

 FOVEの魅力と未来像を情熱的に語る小島さんと、テクノロジー動向と商品化を現実的な目線で見つめるウィルソンさん。2人の話を聞いていると、どこまでも現実平面上にあった仮想現実が、いよいよリアルに近づいていくのだと予感させられる。「マトリックス」の世界は、すぐそこにある。

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