三次元のバーチャルゲーム上で、ユーザーの視線で銃の照準を合わせ、複数の敵を同時に撃ち落とす――そんなゲームプレイを楽しめるようにするヘッドマウントディスプレイ(HMD)の開発が明らかになった。今年の5月に設立されたベンチャー企業のフォーブ(FOVE)が25日に発表したHMDの「FOVE」はそんな優れものだ。

FOVEの最大の特徴は、視線追跡機能と傾き検知機能、ヘッドトラッキング機能を組み合わせ、目の動きで360度の仮想世界を自在に操作可能な点。家庭用・視線追跡型HMDとしては世界初をうたう。
3次元の仮想世界は実際には視差がないため、従来の技術ではすべての表示物体に焦点が合ってしまった。しかし、FOVEは目が見ている三次元上の座標を特定することで、見つめた位置がはっきり見え、見ていないところがぼける焦点表現を仮想世界で可能とした。

三次元の仮想世界で活用するという意味ではゲームの楽しみを広げる技術と言えるが、同社ではFOVEの活用領域として医療・福祉にも目を向けている。たとえば、ユーザーがマウスカーソルやキーボードに視線を送ると、FOVEを通じてカーソル移動やキーボード入力が行えるなど、目の動きだけでパソコンを操作することが可能となる。手が不自由な上肢障がい者が、介助者のサポートがなくてもパソコンを操作し、コミュニケーションがとれるようになる。

フォーブは、国内外のゲームメーカー及びアーケードゲーム、アミューズメント施設での企画を進行する一方、SDK(開発者向けキット)を来年夏にリリースできるように準備しているという。同社はまた、マイクロソフト主催のベンチャー企業支援プログラム「Microsoft Ventures Londonアクセラレータプログラム」に日本企業として初めて採択されており、今年の12月に行われる「Microsoft Ventures London アクセラレーション発表会」を皮切りに、国内外の展示会に順次、FOVEを出展する予定だ。今後の展開に注目される。
