HPは世界シェアナンバーワンのプリンター企業
日本のプリンター市場はキヤノンとエプソンが圧倒的なシェアを持っているが、ワールドワイドで見るとシェアナンバーワンはHPだ(FAX搭載の複合機が半額以下に!「世界シェア18年連続No.1キャンペーン」-HP Directplus)。
それでは、日本HPは国内でどのようなプリンターを販売しているのか。こちらは主に、プリンティング・パーソナルシステムズ事業統括 プリンティングビジネス本部 インクジェットプリンティング部 部長(取材当時)の宇野大輔氏に話を聞いた。
前述の通り、ワールドワイドでのプリンターのシェアはナンバーワンだ。このスケールメリットを活かし日本HPでは、日本市場に最適な製品を、魅力的な価格で提供している。その中から宇野氏がまず紹介してくれた製品が、法人向けのインクジェット複合機「Officejet Pro Xシリーズ」だ。
「Officejet Pro Xシリーズ」の印刷速度は1分間に最速70ページで、「印刷スピード世界最速デスクトップ・プリンター」としている(同社Webページより)。税別7万円台の本製品(単機能プリンター)と同価格帯のレーザープリンターの2倍の印刷速度で、印刷コストも半分という。
現在日本HPでは、こうした「他社にないテクノロジー」(宇野氏)を武器に、国内メーカー製レーザープリンターの牙城であるオフィス向けプリンター市場の切り崩しを図っている。兆しは立ち上がりつつあり、この勢いをどんどん伸ばしていきたいという。
個人向けプリンターは、ローエンドでも複合機で無線LAN対応
一方、個人向けインクジェットプリンターの主力は、コストパフォーマンスに優れた製品とのこと。とはいえ、安価でも機能がしっかりしている点はPCと同様だ。
最も売れているローエンド2機種「ENVY4504」と「ENVY5530」は、税別キャンペーン価格が5500円と6800円と非常に安価な製品だ。だが、単機能プリンターではなくスキャナ機能も搭載する複合機であり、自動両面印刷や無線LAN接続にも対応する。
上位モデルの「Officejet 5740」は、ADF(自動原稿送り装置)やNFCに対応するインクジェット複合機だ。無料提供の印刷アプリをインストールしたAndroid端末であれば、Officejet 5740に当てるだけで、印刷ができる。
インクはカラーとブラックに分かれた、プリンターヘッド一体型インク。プリンターヘッドが目詰まりしても、インクカードリッジを交換すれば解消できる。カラーインクカードリッジを外すと、ブラックだけで印刷できるため、ランニングコストを抑えることが可能だ。インクは染料インクなので、写真の印刷がきれいという特徴もある。
さらに上位モデルとして宇野氏が紹介してくれたのが、有線LANと無線LAN、FAX機能も搭載するインクジェット複合機「Officejet Pro 6830」。採用するインクは4色独立の顔料インクで、染料インクほど写真はきれいではないが、A4カラー印刷コストは約8.4円、A4モノクロ印刷のコストは約3.1円とランニングコストが非常に安い。水がかかってもにじまないのも特徴だ。
文章の印刷が多い方にもお勧めの、家庭でも仕事にも使えるインクジェットプリンターだという。
PCとプリンターの融合は進むのか
今年11月に米HPは、エンタープライズ製品やサービス、クラウド事業を担当する「Hewlett-Packard Enterprise」と、PCやプリンター事業を手がける「HP Inc.」の2社に分社化する。日本法人も同様で、PCとプリンターを担当するプリンティング・パーソナルシステムズ(PPS)が、独立した企業となる。
実は日本HPは、日本市場に自社ブランドのPCとプリンターの両方を投入している唯一の企業。ここまで紹介してきたように単体では価格面でも機能面でも魅力的な製品が多いにもかかわらず、その製品には一社で扱う事で実現するはずの機能、シナジー効果を、これまであまり感じられなかった。
PCとプリンターを専門的に扱う企業となる事で、この点がどう変わるのか。PCとプリンターが密接に連携することで生まれる新しい使い方が出てくることを、大いに期待したい。