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糖やアミノ酸などの生産をより効率的にできる「海の植物工場」が作れるかも

理研、海水で淡水性ラン藻を培養

2015年04月08日 19時06分更新

文● 行正和義/ASCII.jp

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人工海水を用いた淡水性ラン藻シネコシスティスの培養

 理化学研究所は4月7日、淡水性ラン藻の海水培養に成功したと発表した。

 糖やアミノ酸といった有用物質の生産、またはバイオマス燃料としての代替エネルギー製造のための微細藻類の利用が注目されているが、主に研究されているラン藻類は淡水性という問題がある。日本では淡水は比較的豊富だが、世界的にみれば淡水は貴重であり、海水で培養することができれば実用が進むことが期待される。

 研究チームでは、世界的に広く研究されている淡水性ラン藻「「シネコシスティス」を用い、海水と同じ成分にした人工海水による培養を試みた。結果、海水だけでは増殖しないが、窒素とリンを加えることで海水中でも増殖した。また、培養液中の水素イオン濃度が増えると増殖が止まるが、酸性化を抑える緩衝液を加えることで増殖が改善できることが分かった。

人工海水培地および合成培地における細胞内アミノ酸量の比較(3日培養により比較) 

 淡水との培養と比べたところ、海水培養では細胞内のリシンやオルニチンなどの有用アミノ酸の量が大幅に増加したことも認められた。人工海水だけでなく、伊豆大島および伊豆半島付近の天然海水でも培養に成功したが、海水の採取場所によって増殖量に大きな差が生じたという。

天然海水を用いた淡水性ラン藻シネコシスティスの培養

 海水によるラン藻培養は、淡水消費を減らすだけでなく、塩濃度が高いため別の生物が混入して増殖するリスクも避けられるメリットもある。研究グループでは、今後海水培養下でどのように細胞内の変化があるかを詳細に調べ、ラン藻を用いた有用物質生産に実用化に向けて研究を進めるとしている。

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