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丸山不二夫氏、佐々木陽氏にお話をうかがった

識者に訊く、Googleの組み立てスマホ「Project Ara」の今

2015年02月24日 17時00分更新

文● 松野/ASCII.jp

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今は「現実的な落とし込みの作業」の段階

――面白いですね。当然、そこから生まれるものも大きく変わってくると。

丸山 「そうですね。たとえばカメラやセンサーなど、モジュールごとにライフサイクルは違うわけですよ。故障にも迅速に対応できるし、メリットはあるでしょう」

佐々木 「分離できるのは大きいですね。今はプロジェクト自体の現実的な落とし込みの作業が進められていて、MetaMorph社からMetamorphosysというツールが公開されています。回路設計や回路のシミュレーション、Androidのエミュレーターと連携する仕組みなどが提供されはじめていて、Metamorphosysを用いれば、PC上でProject Araモジュールの開発とシミュレーションが可能な状態です。

 最先端の開発環境が、無償かつオープンオースに近い形で公開される事で、Project Araモジュールの開発や、ツールそのものの開発に関わる事ができるようになってきています。Metamorphosys自体はProject Ara以外でも使える汎用ツールなので、他の分野への応用も今後期待できると思います」

――最初にAraが出てきたころ、3Dプリンターのようなものでモジュールを作成している映像がありましたよね。あれは何だったんですか?

佐々木 「あれは、自分でデザインしたAraモジュールのケースを3D System社の3Dプリンターで印刷するという試みですね。3D System社は、ベルトコンベア型の3Dプリンターを試作するなど、いろいろなチャレンジを実施しています。

 Project Araでは、各モジュールが分離し、ケースも自分でデザインできてしまう。それを今のモデルに当てはめようとすると、どうしてもコストも手間も割に合わなくなるんです。そういう部分を解決するためのチャレンジが、あの映像です。

 まだまだ夢のような話かもしれないんですが、いろいろな会社がノウハウをもちよって、新しい試みにチャレンジしていこうというのがProject Araの魅力だと思います」

今年後半にはプエルトリコで市場テストも

――ハードウェアの民主化、という理念を実現するにはまだ課題が多いと。実際にProject Araのモジュールが世に出ると、何が変わるのでしょう。例えば、デジタルのハードウェアの生まれるスピード感が変わるとか。

佐々木 「まず、このサイズで取り外し可能なモジュール式のスマートフォンが作れるというのが新しいですよね。モジュール開発はサードパーティーにも開放されるので、様々なモジュールの出現の可能性がでてきます。種の多様性を確立するには、モジュール開発のエコシステムを構築しないといけなくなってきます。

 エコシステムを構築するための開発ツールの提供や、マーケットプレイスの整備、ロジスティックなども必要になってきますよね。もちろん、Project Araの推進役であるGoogle ATAPの啓蒙やサポートも必要でしょう。現在は一つずつ、課題を乗り越えていっている状況といっていいと思います。この課題を乗り越えるプロセスで、ハードウェアのイノベーション速度が加速し、ソフトウェアのイノベーション速度にどんどん近づいていくんでしょうね」

丸山 「今年の後半にはプエルトリコで最初の市場テストが計画されています。トラックに屋台のように3Dプリンターを乗せて、その場で3Dプリンターを動かして製品を作る販売方法を考えているという話です。去年の予定だと、2015年の1月には50ドルのAraを作ると言っていたので、計画自体は遅れているんですが(笑)」

(次ページ、「Project Araでハードウェアのイノベーションが加速する?」に続く)

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