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丸山不二夫氏、佐々木陽氏にお話をうかがった

識者に訊く、Googleの組み立てスマホ「Project Ara」の今

2015年02月24日 17時00分更新

文● 松野/ASCII.jp

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機能ごとに分割したモジュールをブロックのように組み合わせてスマートフォンを組み上げる「Project Ara」

 2013年10月の発表から1年3ヵ月が経過し、ようやく市場投入のロードマップが示された「Project Ara」。エンドスケルトンと呼ばれるスマホサイズの骨組みに、標準化されたセンサーやカメラなどのハードウェアモジュールを組み込み、電子ブロックのようにスマートフォンを作成するグーグルの一大プロジェクトだ(参考記事)。

 グーグルの掲げる目標はユーザー、開発者、そしてスマートフォンの間の関係をオープンにする「ハードウェアの民主化」だが、実際のところProject Araとは何なのか、一体何ができるのか、そして今、プロジェクトはどこまで進んでいるのか――まだまだよく分からないという人も多いだろう。今回はProject Araの現在について、国内でProject Araに深くコミットし、合同勉強会なども開催している、早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏、株式会社GClue 代表取締役の佐々木陽氏にお話をうかがった。

目標は「モバイルエコシステムの民主化」

早稲田大学大学院客員教授の丸山不二夫氏(左)、株式会社GClue 代表取締役の佐々木陽氏(右)

――Project Araですが、『60億人のためのプラットフォーム』『全人類のためのデザイン』という壮大なキャッチフレーズが使われていますね。

丸山 「グーグルは『モバイルエコシステムの民主化にすべてのユーザーを参加させる』という、すごく大きなビジョンを持ってやっているんです。インターネットの次の発明になると。

 1969年に大きなパラダイムシフトがあって、ひとつはアポロ11号で人間が月に行ったこと。それと同じ時期に、アメリカで世界初のパケット通信が行われているんです。『L』という文字だったそうですよ。当時は、そんなものが今のインターネットになるなんて誰も考えていなかった。それと同じような革新的なことをやろうと言ってるんですね。だからもしかすると、Araが本格的に来るのは50年後になるかもしれない(笑)

――そもそも、このプロジェクトの発端はどこにあったのでしょう?

丸山 「色々あるけれど、DARPA(国防高等研究計画局)が『META』というプログラムをずっと進めていて。これは何かというと、モデル・ベースデザインで装甲車を設計するツールの開発プロジェクトです。アメリカの軍需産業はすごくお金持ちで、優雅に開発できるというイメージがあるけど、彼らは実はけっこう合理的で、オープンソースや民間の技術を使った方が効率がいいと考えている。開発のオープン化みたいなことを熱心にやってるんです。

 METAのツールは3年ほど前にオープンソースで公開されています。Araの回路設計やシミュレーション、出力まで管理するツール『Metamorphosys』はそれを応用したものです」

様々なメーカーのコンポーネントで自分好みのスマホを作る

――ブロックのようにモジュールを差し替えて作るスマホという、ちょうど自作のPCを作るみたいなコンセプトですよね。DOS/V時代のPCというか。

佐々木 「コンポーネントをすべて自由にアタッチメントできるようにする、というのが最初のコンセプトだったんです。こういう考え方は何年も前から時々出ていたんですが、あくまで1社のメーカーが垂直統合で、自社のコンポーネントが切り離せる程度のものだったんです。Project Araでは、様々なメーカーが開発したコンポーネントが、無数の組み合わせでスマートフォンを構成する事になります。この点が、モバイルエコシステムの民主化と言われている所以になります。

 モジュール間通信には『UniPro』という通信プロトコルを使い、独自のコネクターも開発しています。UniProは現在でも、例えばスマホの内部で液晶とチップを繋ぐような高速通信を実現するプロトコルとして用いられています。そういう形で標準化されていたのを、モジュールごとにUniProを搭載し、電子ブロックのようにつながるようにしているのがProject Araです。Project Araで用いられるUniProを搭載したチップなどは、東芝が積極的に開発に参加しています」

丸山 「前身になる考え方として、CPUとデバイスの変化がありますよね。2005年にマルチコアCPUが登場して、サーバーなんかがどんどんマルチコア化していった。でも、ケータイは実はもっと進んでいて、GPUや通信用モジュール、センサーなど、すべてをワンチップ化していたんです。いわゆるSoCですね。サーバー側のマルチコア化とデバイス側のSoC化というのは典型的な流れですが。

 でも、SoC化というのはどこかで限界が来るんですよ。どんどん小さくして詰めていくだけなので、やっぱり面白くない。そうなると、一旦それを外側にばらそう、という発想が出てくるんです。それがコンポーネントごとに高速のネットワークで結ぼう、というAraに繋がってくる。ある意味でProject Araの登場というのは、SoCをどんどん縮めていった反動だと思います。

 単純にコストを安くするだけならSoC化すればいいんです。ただ、それだと技術の進歩が止まってしまうというか、今のスマホの発展段階でずっと進んでいってしまう」

(次ページ、「今は『現実的な落とし込みの作業』の段階」に続く)

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