クリエイティブと意志決定に必要な内向的な時間
別のForbesの記事では、Appleの共同創業者、スティーブ・ウォズニアク氏の言葉を借りて、クリエイティブの成功と内向性について指摘しています。その引用には、「ひとりで仕事をしろ。メンバーなるな。チームに入るな」とあります(関連リンク)。
外交的で闊達にコミュニケーションを取り、社内を引っ張り、社外の人々とつながって……。そんなリーダー像を持っている人もいるかも知れません。筆者も、それを苦なくできるようになることは、ある意味「理想だな」と、ひとりバークレーの書斎で原稿を書きながら思ってしまいました。
しかし、ウォズニアク氏の言葉は、果たして外向性だけで、クリエイティブさや重要な意志決定は下せないのではないか。内向的な面も必要ではないか、という問いかけに聞こえました。
アイディアを磨くには、良いチームで議論することが重要です。様々な知見と深い造詣を持つ少数の人たちで、アイディアを掘り下げる作業は、大変ではありますが、とても楽しい作業です。
ところが、こうした議論は、1を10にする作業ではあっても、ゼロから1にする作業ではありません。何をやるかを決めずにミーティングをしても、誰かの意志なしには、ベクトルが1つの方向に向かないのです。
おそらく、アイディアの原石を作るには、自分がひとりでやるべきでしょう。
しかしビジネスはバランスが重要
素晴らしいアイディアの原石は、ひとりで考える。「内向的」であることは必ずしもネガティブではなく、必要なことです。
もしも自分が、あまり外に出て行ったり、人前で目立ったりするのが不得意だと思っていても、活躍できる場所はあるのです。あるいはそういう場所、そういう仕事の仕方を勝ち取ることもできるというわけです。
その際、いくら内向的でも、自分がどのようにして企業や世の中に価値を帯びるか、といった外向けへの「戦略」が必要です。
もちろん、インターネットを味方につけて、自分の活動をこつこつと積み重ねて魅せていくこともできるかもしれませんが、「戦略」によってもう少し近道ができるかもしれません。
ただ、インターネットでの振る舞いは、外交的な一面としてバランスするとすれば、ひたすら自分のことに打ち込む内向的な人にとって、こんなに良いツールはないという評価をすることができるのです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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