見所はプロトタイプと忘れ去られそうな周辺機器
Appleがデジタルカメラを出していたのをご存じですか? あるいはリンゴマークがついているプリンターはどうでしょう?
最近はBeatsを買収したのでヘッドフォンやスピーカーなど「AppleブランドではないAppleのオーディオ製品」が増えましたが、iPod Hi-FiというなんともアメリカンなiPod用スピーカーも、かなりレアな製品と言えます。
個人的に欲しかったのは、初代iPhoneとともに登場したBluetoothヘッドセット。極限までシンプルな黒いヘッドセットは、どうしても余計なデザインをしてしまう現在のヘッドセットとは一線を画す美しさです。
こういった具合に、自分が触れてこなかったApple製品をふりかえることができるのも、「ICONIC」の楽しみ方の1つです。その範囲は自分だけでなく、多くの人々が触れる事がなかった、プロトタイプにまで及びます。
半透明の筐体のMacもいくつか出ていますが、例えばAppleのPDA、Newtonの開発者向けプロトタイプも、透明のボディに収められていました。あるいはAppleのノートブック型パソコンの原型も見ることができますし、Mac miniのプロトタイプにはiPodのDockが搭載されていました。
完成されたデザインだけでなく、その過程が楽しめるのもこの本の醍醐味と言えます。
言葉とともにApple製品を楽しむ
「ICONIC」は、デスクトップ、ポータブル、周辺機器、iデバイス、プロトタイプと続き、最後はパッケージのセクションがあります。Apple製品を開けるとき、いつもそのパッケージの仕方や、それをほどく過程も楽しむことができるものです。
コンピューターの箱、特許を取得したiPodのプラスティックのパッケージ、現在はMac App Store経由に統一され姿を消したソフトウェアのパッケージなど、Zufi氏のコレクションがAppleの「すべて」であることを強く印象づける最終章でした。
この写真集は、The LoopのJim Dalrymple氏、Appleの共同創業者であるSteve Wozniak氏らの前書きから始まります。冒頭のZufi氏の文章に続いて、美しい写真の数々を楽しむ事ができるが、各見開きページには1つずつ、Apple製品に関するコメントの引用が並んでいました。
Steve Jobs氏、Tim Cook氏、Jonathan Ive氏らAppleでまさに製品開発に携わった人々の言葉は、その製品への思い入れやこだわりを感じるには充分。また、筆者の先輩のジャーナリスト、林信行氏の言葉もiPod nanoのページに引用が紹介されていたのです。
手に入れてすぐにこの原稿を書いているので、まだ「ICONIC」を6回ほどしか開いていませんが、開くたびに新たな発見がある、そんな1冊でした。しばらくはデスクの脇に置いておこうと思います。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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