低価格タブレットが登場する背景
ユーザーにしてみれば非常にありがたいこの状況だが、MicrosoftとIntelという大手2社による戦略的値付けの部分に依存している。例えばMicrosoftは2014年よりOEM支援の施策として、9インチ未満のディスプレイサイズのPC製品について、Windowsのライセンスを無料にする方針を打ち出している。さらにOfficeバンドルの製品についても、ほぼ無料で提供を行っているといわれ、PCメーカーがPC製品を販売する際の大幅な価格引き下げに寄与している。
これは実質的にOSソフトウェアのライセンス料がかからないGoogleのAndroidを意識した戦略とみられており、Windowsタブレットが競合していくうえで不利にならないようにしている。同時にGoogleは「Chromebook」の拡販を進めており、こちらへの対抗としてWindows搭載ノートPCについても上記のOS無料化が適用される。
200ドル(約2万4231円)ノートPCであるHPの「Stream 11」はこの恩恵を受けたものとなるが、11インチサイズのディスプレイは本来であれば無料化の条件には当てはまらない。そのため、Microsoftが別の条件を設定しているか、あるいはOSライセンス料金をほぼ無料に近い水準にまで落としていると考えられる。
Bing/MSNやOffice 365へのサービス誘導
「これではMicrosoftが儲からないのではないか?」と考えるのは当然だ。実際、これまでWindows OSのOEMライセンスで稼いでいたMicrosoftは、どれだけ低価格Windowsタブレットが売れても収益にはならないわけで、単にライバルに対して消耗戦を仕掛けているように思える。
しかし実は、Microsoftはこうした低価格PCについては従来のOEMライセンスによる収益化戦略を転換し、サービス販売で稼ぐ方向へと転換している。具体的には「Bingのよりいっそうの活用」、そして「Office 365のサブスクリプション販売」だ。
低価格Windowsタブレット/ノートPCにはOfficeがプリインストールされているモデルがあり、これらは「Office 365 Personal」の1年間サブスクリプションが付与されている。Office 365を契約中のユーザーには1TBのOneDriveオンラインストレージが付与され、近い将来には容量無制限になることがMicrosoftによって予告されている。もしOneDriveを継続利用したい場合はOffice 365サブスクリプションを有償更新することになる。
つまり、この価格帯のPCにおけるWindowsやOfficeバンドルは「ユーザーへの撒き餌」であり、OneDriveやOutlook.comなどのサービスにユーザーを囲い込みつつ、Bing関連の広告収入やOffice 365サブスクリプションで稼いでいこうというわけだ。