欧州連合(EU)のデータ保護当局は2014年11月28日、同地域内で今年5月に認められた「忘れられる権利」を全世界に適用することを求めるガイドラインを公表した。
「忘れられる権利」(Right to be Forgotten)はEUの最高裁にあたる欧州司法裁判所(European Court of Justice)が下した判決で、検索エンジンは現状にそぐわない不適切なプライバシー情報へのリンクを削除しなければならないとの判断が示された。この権利はウェブページへのリンクを検索から削除することから(自分のことを)「探されない権利」とも言えよう。この判断に従って Google は5月より欧州域内からの個人情報削除の依頼を受けており、現在までに174,000人から延べ60万以上のURL削除依頼申請があり、このうち約42%のリンクが削除された。Googleが公開した資料によると、忘れられる権利に基づいた国別の削除申請数トップ3はフランス、ドイツ、英国の三国だ。
EU加盟28カ国のデータ保護当局を代表する組織 Article 29 Working Party(データ保護指令第29条作業部会)は、現状 google.co.uk(英国) や google.fr(仏)、google.de(独)、google.it(伊) といった欧州域内の Google に適用が限定されている「忘れられる権利」を .com(米)など全世界の gTLD / ccTLD 運営の Google検索サービスにも適用することを求める指針を発表した。
cf. 欧州議会、Google検索事業分割を求める決議採択へ
忘れられる権利が欧州域内に限定されているのであれば、例えば google.com と google.co.uk の検索結果を比較することで容易に同権利に基づいて削除されたであろうウェブページのリストを作成することが可能な上、その内容を分析することで誰が削除申請をしなのかまで突き止めることが可能である、というのが作業部会の主張だ。「EUデータ保護法のもと、誰もがプライバシー情報を守る権利があり、この権利は効果的に、そして完全な情報保護を実現されるものでなければならない」(Article 29 Working Partyのトップを務めるIsabelle Falque-Pierrotin(イザベル・ファルク・ピエロタン)氏)。これに対して Google は、欧州域内から google.com にアクセスしても自動的に接続元の国別検索サイトに転送されると反論しているが、「技術的にリダイレクトを回避することは容易だ」と指摘されている。世界最大シェアの検索企業は欧州検索市場シェアが90%を超えているものの、同地域内における google.com(米国版)の利用者数は5%未満に過ぎない。
EU規制当局はまた、Google が申請に応じてリンクを削除した際に、該当ウェブサイト管理者にその旨を通知していることについても批判している。忘れられる権利は通知義務を課していないが、通知を手がかりに誰がリンク削除要請を行ったのか判明する可能性があるためだ。
今回のガイドラインは法的拘束力がなく、Google が忘れられる権利の適用対象を拡大するかどうかは不明だ。また、欧州域外の Google まで含めて削除申請できるのが欧州域内の居住者に限定されるのか指針で明らかにされていない。同社広報担当者はガイドラインを精査して慎重に検討すると述べている。
Issued by the Article 29 Data Protection Working Party (PDF)
http://ec.europa.eu/justice/data-protection/article-29/press-material/press-release/art29_press_material/20141126_wp29_press_release_ecj_de-listing.pdf
'Right to Be Forgotten' Should Apply Worldwide, E.U. Panel Says
http://www.nytimes.com/2014/11/27/technology/right-to-be-forgotten-should-be-extended-beyond-europe-eu-panel-says.html?_r=0