今後は24bit/96kHzの楽曲が主体に
ネイティブ収録の楽曲にも取り組む
ランティス楽曲のハイレゾ配信は、当初は時間などの制約から、48kHz/24bitなどで収録したトラックをミックスダウンしただけで、そのまま配信する「TRUE STUDIO MASTER」の形態も存在した。しかし今後は原田光晴氏(山下達郎などこだわりの強いアーチストの作品を手がけてきたことで知られる)など、腕のいいマスタリングエンジニアの参加もあり、ほぼすべてが96kHz/24bitの「HD RENEWAL MASTER」としてリリースされていくという。
マルチトラックで収録した音源を、ステレオの左右チャンネル用にミックスダウン(2ミックス)した段階から24bitで扱えるため音質的にメリットがあるほか、原田氏ならではの音の演出の要素も加わり、より魅力的な音質を実感できるようになるという。
楽曲制作の環境にも変化が見られる。
音楽制作プロデューサーの佐藤純之介氏によると、「これまでに配信した音源はいずれもCDとしてリリースすることを前提に作られた音源の流用だった」が、ハイレゾ配信とその成功をきっかけとして「ハイレゾ化を前提として制作した楽曲を作れる」ようになってきており、そのための設備投資も実施したのだという。
たとえばハイレゾ配信が開始された後の企画となった『Heart of Magic Garden 2』(伊藤真澄のリアレンジによる有名アニソンのセルフトリビュートアルバム)では、一部楽曲のマスターを96kHz/24bitで収録し直し、アップコンバートではなくネイティブでハイレゾデータを取り扱っている。これまで収録時の品質に48kHz/24bitが選ばれたのは主にプロセッサーの処理能力で扱えるトラック数の制約が出てしまうことが理由だったそうだが、これに合わせてスタジオの設備を増強し、96kHzでも従来の48kHzと同等数のトラックを扱えるようにしているという。
いい音ユニオンでも先行試聴できたHeart of Magic Garden 2を例にとると、聴きどころは12曲目、μ'sの『Snow halation』。48kHz/24bitでマスターを録り、マスタリングしてきたものを、改めて96kHz/24bitで収録しなおし、レーベルとしてはじめてネイティブで処理した。
なお、Heart of Magic Garden 2は9月16日のリリースに先立ち、会場で先行試聴が可能となったもの。もうひとつ会場限定で公開された『ディープパンツァーCDです!』では、16分弱あるトラック1のドラマCDパートに挟み込まれた、迫力ある戦車の砲撃やエンジン音を体験することが可能。実際に聞くとその迫力ある低音のすごさを感じるが、佐藤氏は「ハイレゾになると迫力の中にもディティールがある」とコメント。筆者も実際の音を聴いたが、タブレットとヘッドフォンではなく大型のスピーカーで聴いたらどんな感想を得られるのだろうかと興味を引かれた。
「アニソンはアニメあってこそ。だからこそ(作品の世界観に合った)楽曲として作りこまれている。普通にも楽しめるし、凝って作り出されているからこそ新しい発見がある。いい音ユニオンでは、ブースに音源を用意したが、デモやショップさんで試聴するのとは違った世界を感じ取れるきっかけとしていろいろな人々が嬉しいと考えています」(野村)
今回はテスト的な試みとして8社の協力で実現したいい音ユニオンだが、機会があればより多くのメーカーに広げたさらに面白い取り組みを企画したいという意欲もあるという。ぜひ次の取り組みにも期待したい。