このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第270回

20nmプロセスへの移行を着実に進めるAMDのGPUロードマップ

2014年09月15日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

NVIDIAとは違うアプローチ
28nmから20nmに移行するAMD

2013~2015年までのAMD GPUのロードマップ

 ここからは今後の予定だ。まずはTongaコアを使ったより上位製品としてRadeon R9 285Xになると思われる製品が比較的すぐに用意できる模様だ。これはおそらくNVIDIAのGeForce GTX 770/970を競合とするポジションになるだろう。

 もともとTongaはTahitiのリニューアルなので、本来は32CU(Compute Unit)構成であるが、Radeon R9 285では4CUを無効化した28CU構成としてリリースされている。Radeon R9 285Xはこれをフルの32CU構成としてリリースされる見込みだ。

 出荷時期は競合製品の出方を見ながら、ということで10月ないし11月とやや幅がある。これがリリースされると、Tahitiベースの製品が完全に置き換えられることになる。

 さて、TSMCの28nmプロセスを使う製品は、このTongaが最後となる。これに続く製品はTSMCの20nmに移行する。前回お伝えしたとおり、NVIDIAがこの20nmの利用をあきらめ、28nmに一旦巻き戻し、むしろ16nmに急ぐ動きを見せたのと対照的に、AMDは20nm世代で製品を出す方針に変更はないようだ。

 この20nm世代は2種類の話が出ている。まず現在のVolcanic Islandsに続き、以前から噂されていたPirates IslandsベースのGPUが20nmプロセスで製造され、Radeon Rx 3xxシリーズとして投入される。

 これに続きFaraway Islandsと呼ばれる製品が、おそらくはTSMCの16nm FinFETプロセスで製造される予定となっている。Pirates Islandsは2015年の比較的早い時期に、Faraway Islandsは(TSMC次第ではあるが)2015年末~2016年に投入、というシナリオになっている。

 もう1つの話は、このPirates Islandsをスキップし、いきなりFaraway Islandsが16nm FinFETプロセスで出てくるというものである。さてどっちの可能性があるか?

 筆者的には後者は色々考えにくい。2014年7月に投資家向けに行なわれた2014年第2四半期の決算発表において、同社のLisa Su(Senior Vice President and COO)氏は「20nmプロセスを利用した製品を2015年中に出荷開始し、さらにFinFETに移行を急いでいる」と明確に述べている。

 AMDもまた、NVIDIAとほとんど同じタイミングで20nm製品のテープアウトを終わり、最初の試作品の評価はやはり今年3~4月に行なっているはずである。したがって、20nmプロセスをスキップする/しないの判断はこの時点でできる、というかここで判断しないと致命的になる。

 それを考えると、7月の時点で「20nmプロセスを利用した製品を2015年に出荷する」と言明しているのは、つまり3~4月の時点でVolcanic Islandsの20nmプロセスを使った製造にGOが出た、と考えていいだろう。

 もしもNVIDIAのように20nm世代をスキップして16nmに移行するのであれば、GM204と競合できる規模のハイエンドコアを28nm世代で大至急用意する必要があるのだが、そうした動きが見られないというのは、20nm世代で十分競合できると判断したのだろうと考えられる。

 もっとも技術的には、「なぜAMDはOKなのにNVIDIAはダメだったのか」という疑問が残らなくはないのだが、実はかつても似たようなことがあった。40nmプロセスを利用したGeForce GTX 480 vs. Radeon HD 5870という構図である。

 この時の話は連載146回で取り上げたが、このVIAの欠陥問題はNVIDIA自身がIEDMで論文を発表していたからこそ、わかったという側面がある。まだ20nmを使った量産に関する論文は各社とも一切なく、現状なにが問題だったのかを明確に断じられる根拠はない。これに関しては、もう少し時間が経つまで「なにが問題だったのか」はわからないだろう。

 話を戻すと、図はPirates Islandsがあることを前提に作成しているが、ここは前回とほとんど変わらない。メモリー構成で、AMDはGDDR5の後継にHBM(High Bandwidth Memory)を使う予定だが、少なくとも当初のPirates Islandsにこれが間に合うかというと、かなり疑わしい。

HBM(High Bandwidth Memory)の構造。SK-Hynixのウェブサイトより抜粋

 HBM自身は、例えばSK-Hynixはすでにサンプル出荷を開始しており、まもなく2Gbit/4Hi(2Gbit/ダイを4枚積み重ねたもの。合計容量は8Gbitになる)品の量産を開始するとみられている。

 AMD自身も2013年中からこれを使った評価を行なっているが、GPUそのものも20nmという新しいプロセスに切り替えるタイミングで、一緒にまったく新しいメモリーテクノロジを導入するのはさすがにリスクが高すぎるように思う。

 個人的にはHBMの採用はPirates Islandsの第2世代あたりになるのではないかと考えている。これが2015年の後半で、Faraway Islandsはさらにその先の2016年あたりになるのではないかという気がする。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン