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特別な光源も機材も不要な量子通信中継装置が実現可能

世界初ダイヤモンドの光吸収を用いた量子テレポーテーションの新原理を発見、横浜国大

2015年02月06日 15時47分更新

文● 行正和義

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発光と吸収を用いた量子テレポーテーションの動作原理。ダイヤモンドAから発光した光子は、ダイヤモンドBに吸収されることで、ダイヤモンドCへの量子テレポーテーションが完了する

 横浜国立大学は2月4日、自然のダイヤモンドを用いる新量子テレポーテーションの原理を発見したと発表した。自然現象だけで量子もつれを検出するという画期的なもので、量子通信の信頼性を飛躍的を上げることができる。

量子中継の動作原理となる量子テレポーテーションの概略。あらかじめもつれた量子BとCに、別の量子Aをぶつける。量子もつれ検出に成功した瞬間にAの状態がCに転写される。

 量子通信は、粒子同士が一度関係を持つとその後も量子力学的に相関するという量子もつれ(エンタングルメント)を用いるが、光子や電子の量子もつれ検出には特殊な検出器を利用する。量子通信においては量子もつれ状態にある光子を光ファイバーで送ることになるが、量子通信においても通常の光ファイバー通信同様に距離による減衰やノイズ混入があるため中継を必要とし、中継装置の信頼性が重要となっていた。

ダイヤモンドを用いた電子と光子の量子もつれ検出の概要。ダイヤモンドに内在する量子もつれ機構を利用し、電子と光子の量子もつれを検出。ほぼ完全な量子もつれ検出を実験で実証

 横浜国立大学大学院工学研究院による研究では、ダイヤモンドの内部にある窒素空孔欠陥と呼ばれる部位にある電子スピンを利用。物質内部にある量子もつれ状態を使い、あらかじめ電子の状態をさまざまな状態にしておいて光を照射したところ、光子と電子が量子もつれにある状態ときのみに光が吸収されることを実験で確かめた。

原子に内在する量子もつれの起源となる力。原子を構成する電子と核子は超微細相互作用、電子と光子はスピン軌道相互作用で量子的にもつれることができる

 励起状態の電子がエネルギーの低い軌道に降りて光子を放つといった原子内現象には量子もつれが多く存在し、光子と電子の量子もつれを作成することは量子通信・量子計算の基本的なものとなっている。今回発見された光子の吸収と量子もつれを伴った発光を組み合わせて量子通信の中継装置として利用することにより、量子通信の信頼性を格段に高められ遠距離の量子暗号通信などさまざまな応用が可能という。

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