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NewsPicks編集部が答えるビジネスメディアのプラットホーム(後編)

必要なのはニコニコ動画的な思い切り

2014年07月07日 07時00分更新

文● 北島幹雄(Mikio Kitashima)/アスキークラウド編集部

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──日経には紙がありますが、ウェブ単体でブランディングできているところはまだありません。

佐々木 そもそもネットだけという点には、縛られていません。書籍と連携するなど、紙とバーサスという立ち位置ではないのです。例えば新雑誌の創刊も100%ないとは言えません。

梅田 紙の優位性はどうしてもあります。我々も紙を越えるインターフェースを目指しましたが、紙はすばらしい。美しさ、右脳的な能力で読める点などを連携させるのがいいと思っています。新しいデバイスが開発されない限り、現状では紙に勝てません。
 そしてもう1つ、ブランドで思っているのは、エコノミストや日経などは組織にブランドがありましたが、これからは個人になっていくと思います。まさに「佐々木さん」。メディアだけじゃなく、編集者のバイネーム。組織でなく個人に信頼が移る、デジタルな世界だからこそ、そちらで信頼を築くべきです。

佐々木 編集部を作ったあと、個人の自由度を相当高めたいと思っています。本を書いても、雑誌に寄稿しても、テレビに出てもいいので。個人が動くスター集団にしたいです。

梅田 NewsPicksでアナリストがコメントを出していますが、それを見たニューヨークタイムズからLINEについてのコメント取材が来ました。これは名前を出しているからであって、個人に紐付いているのです。

──それではNewsPicks編集部に、佐々木さん以外に編集長が生まれ、別の編集部ができる可能性はありますか?

梅田 それは、日経ビジネスや日経テクノロジーのような?(笑)

佐々木 ある種それくらい大きくなったらいいです。

梅田 個人で作るものなので、組織とか抽象的な名前よりは個人名がいいですね。

──個人名だと、その人がいなくなったとき、取替可能性がなく、永続可能性もなくなるのではないでしょうか? 旧来メディアでは編集者1人を育てるのに時間がかかりますが、まだ育てられる余力がありました。その機能はどう担保しますか?

佐々木 そこは中長期的ですが、サッカーが参考になりますね。バルセロナのように、ユースも充実しておきながら、足りない部分は外から取ってくるように。レアルは育成組織がボロボロじゃないですか。全部外からになっている。ただ、レアル型でもお金があれば成り立つので、いろいろな形はあります。育成と外のバランスですね。
 既存メディアは自社育成にこだわり過ぎているがゆえに、強くなりません。平均点以上の人が多く生まれる育成システムは素晴らしいですが、60〜70点の人をたくさん量産するものであり、スターができるシステムではない。我々はスターを生むシステムとともに、スターの人が入ってきたくなるような土壌を作って、リクルートではないですが、卒業したければ全然大丈夫というようにしたいです。

──オールドメディアでは人数・時間をかけて取材を行っています。ウェブではその規模をどのように維持しますか?

佐々木 そこを作れるかどうかです。有料でいえば、ドワンゴなども利益率がどんどん上がっています。うまく回り始めればいけると思います。広告モデルは労働集約的なので、利益率が上がりません。そういう意味でも成功させることが大事です。最初は持ち出しになりますが、これまであまりネットで成功例が進まなかったのは、オールドメディアもネットメディアもすぐに黒字化にこだわって、ちょこちょことしか投資しなかったから。ニコニコ動画のような思い切りが必要です。

梅田 我々が違うところでいえば、SPEEDAという非常に安定したデータベース事業があります。経済上のストックで稼いで、フローのニュース事業を行う。経済の領域は、最終的にその組み合わせ、それが永続的なモデルになります。
 今はフローを育てるためにストックで稼ぐビジネスモデルです。そのため、投資できるモデルがあるのかチャレンジできています。SPEEDAがなく単独だったら、本当に辛いものになります。不可能です。ブルームバーグも債券向けの端末から始めて、最初は大赤字でした。これが経済の領域のプラットホームでの1つの方法、解かなと思っています。
 総合メディアはよりプラットホーム化が進めば、生き残るのは1、2社でしょうね。あとは領域ごと、例えば経済系とか、そういうセグメントになっていくのではないでしょうか。Facebookも紙を始めたし、LinkedInもPulseを買収してニュースアプリを出している。KADOKAWAとドワンゴのような融合は、「なるほど」と思いました。我々の場合は、人材の流動という形で佐々木さんに来ていただいた。コンテンツとプラットホームの融合という意味では近いかも知れませんね。

──ニコニコ動画はサービス開始から4年後、四半期ベースで初の黒字化となりました。

梅田 じゃあ我々は3年で。3年くらいの猶予を(笑)。

佐々木 もっと早く目指したいですね。


(前編はこちら


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