ランダム食材から発想した自由すぎる創作料理
ここまではいわゆる実験パートであったが、クレイジーキッチン最大の魅力は、参加者それぞれが持ち寄った食材をランダムに配分し、2グループにわかれて料理する「調理」にある。
共通の食材は生きたままのロブスター。各々のキッチンブースには春巻の皮や野菜、バナナ、ヤシの実の砂糖漬け、タピオカなどが並んでいた。混沌とした食材を目の前に、メンバー全員で試行錯誤しながら少しずつ料理を完成させていく。作るべき料理の輪郭が見え始めた瞬間の打ち解けた雰囲気はなんともいえずいいものだ。
グループ内の会話も自然と弾む。今回がイベント初参加の「ハコ」さんは、「このイベントはニコニコ学会で知ったんです。有名なニコ生ユーザーがいるのでもっとハードルが高い企画だとばかり思っていたけど、参加してみるとそうでもなかったですね」と笑みをこぼしていた。
途中、昆虫食伝道師の「地球少年」さんが食用の虫を調理する場面では、部屋中にすえた臭いが充満するという珍騒動もあったが、無事に両グループともに料理が完成。
女性が多かったグループは、餃子の皮を用いたピザと、ゆでたロブスターの上にトマトとナスのソースを大胆にかけたもの。春巻の皮をハサミで器用に切ってつくったエビや蝶、文字の飾りが華やかで、「職人技だなぁ」と関心を集めていた。料理名は「『赤坂離宮』ですかね!」と笑顔で教えてくれた。
一方、男性のみのグループは鳥ハム、リンゴのワイン煮、バナナとココナッツの春巻を作ったようだ。まぁ、ここまでは普通なのだが、「……あとピンクのタピオカドリンク、中華風トマト煮込みの食用ゴキブリのせ、ロブスターのポタージュのミルワーム添えも作りました」とまさにクレイジーなメニューとなっていた。
焼いた虫をおそるおそる口に運ぶと、メザシの頭の部分のような苦みが口の中に広がる。イベントに参加しなければ一生食べなかったであろう料理との出会い──。百聞は一見に如かずとはこのことだろう。仲間とともに作り上げた料理が並ぶテーブルを囲んだ食事風景は、まるで家庭のような温かさに包まれていた。
ただ無秩序に料理して遊ぶだけでなく、もちろん後片付けも完璧だ。ニコニコ系のイベント全般に言えることだが、大人たちが全力で遊び騒ぐ趣向の裏にはこのような堅実さがある。水回りからコンロ周りまでくまなく磨き上げられたキッチンは、イベントの理念を表しているかのように思えた。
次回は今年10月に開催
イベント終了後、伊予柑さんに話を伺うと「4回目にしてかなりクレイジーな……、極北まで来てしまった感じがする。次は逆に普通のことをやってみたい!」と、ビジョンを語ってくれた。次回は今年10月に開催されるそうだ。
仲間と協力し合いながら「なにか」を作り上げる喜び、そして「ものづくり」の原点に触れることのできるクレイジーキッチン。イベント終了後、料理がもっと楽しく自由なものとなった気分を味わえた。ちなみに当イベントの様子はニコ生のタイムシフトで視聴できる。