セルフパブリッシングの未来を考える短期集中企画。前回は、東方の同人小説を取り上げて大きな反響があったが、今回は漫画家の鈴木みそ氏に話を聞く。鈴木みそ氏は、既刊の『限界(ギリギリ)温泉』をKDP(Kindle Direct Publishing)で、あらためて発売。巧みなプロモーションで人気を博し、昨年の利益(注:売上ではない)が約1000万円に達したことを公表し注目を集めている。
年間利益1000万円の衝撃
<後編はこちら>
―― ブログで2013年の利益が1000万円を超えたと公表され、大きな話題となりました。「電子書籍は儲からない」という声もあるなか、驚いた人も多く、また作家にとっては励みになる数字だと思います。
鈴木みそ 「まさにギリギリでしたけどね(笑)。1000万円と6057円でしたので、危うく999万円という中途半端な数字になるところでした」
―― ずばり今年も同じことが再現できますか?
みそ 「昨年の主要なタイトルは7本くらいありました。今年も売れ続けている、主要の4タイトル(『限界集落(ギリギリ)温泉』『アジアを喰う』『僕と日本が震えた日』『マスゴミ』)に今年新しく2タイトル(『Xてんまでとどけ アイゾー版』『ナナのリテラシー』)が加わり計6タイトルのマンガがどのくらい動くか――正直去年の3割くらいかなと思っていたんです。
ところが、新作『ナナのリテラシー』の電子版が思った以上に好評で、それに引っ張られる形で、昨年展開したタイトルもランキングが上昇して行き、1月、2月に良いスタートダッシュを切れたかなと思いますね。この勢いであれば昨年の半分以上は行くのではないかと。
それに加えて、この“1000万円越え”の記事がたくさんRTいただいて、ニュースにもなりました。そのことも作品の売り上げに影響していると思いますね。今、月200万円くらいの利益が出ていますので」
―― 現状で月200万だと、また1000万円超えるんじゃないですか?
みそ 「だと良いのですけどね(笑)。去年も、年初は月300万円とかになっていて、でも段々その数字が落ちていって1000万円だったので、まあ、今年は600万円くらいかなあと」
この連載の記事
-
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? -
第97回
ビジネス
生成AIへの違和感と私たちはどう向き合うべき? AI倫理の基本書の訳者はこう考える -
第96回
ビジネス
AIとWeb3が日本の音楽業界を次世代に進化させる -
第95回
ビジネス
なぜ日本の音楽業界は(海外のように)ストリーミングでV字回復しないのか? -
第94回
ビジネス
縦読みマンガにはノベルゲーム的な楽しさがある――ジャンプTOON 浅田統括編集長に聞いた -
第93回
ビジネス
縦読みマンガにジャンプが見いだした勝機――ジャンプTOON 浅田統括編集長が語る -
第92回
ビジネス
深刻なアニメの原画マン不足「100人に声をかけて1人確保がやっと」 - この連載の一覧へ