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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第43回

セルフパブリッシングの未来(3)

作家は1000人の村を育てる術を考えるべき――鈴木みそ氏

2014年05月24日 18時00分更新

文● まつもとあつし

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 前編に引き続き、漫画家の鈴木みそ氏にお話を伺う。新人でもセルフパブリッシングは有効なのか? 作家が最低限抱え込むべき読者は何人か? 出版社といかに付き合うか? KDP(Kindle Direct Publishing)を駆使することで年間1000万円の利益を叩き出した鈴木みそ氏による、最前線からのセルフパブリッシング論をお届けする。

後編ではセルフパブリッシングに関する諸事情について鈴木みそ氏に伺った

自分の“本当の”読者数を見極める

前編はこちら

―― ここまで“鈴木みそ”レーベルの場合を語っていただいたわけですが、例えばこれから売り出したい新人はセルフパブリッシングという環境を活かせるのでしょうか? そんなに甘いものではない、という感覚もありますが。

鈴木みそ 「ものすごく難しいでしょうね。

 ちょっと名前が売れた、という段階の僕でも、無条件で売れるわけではない。『マスゴミ』にしてもKindle連載じゃなかったら1500部がいいところではないかと。1500部セルフパブリッシングで売れても、原稿料はほとんど回収できないのです。また紙の本で『Xてんまでとどけ』という作品を2000部出したら、やっぱり全部は捌けない。

 おそらく僕が確実に捕まえている読者は800人くらいだと思っているんです。では、その800人で僕はどんだけ食えるのか? 僕がいくら高い本を出しても、買ってくれる、絶対安定読者なのかといったら、危ないんですけど。

 これが1000人になれば、つまり1000部が安定的に売れれば、何とかぎりぎり食えると言えるところかなと思います。この“村”を育てていく、読者と一緒に生きていくにはどうしたらいいか? というのが、作家が一所懸命考えるべきテーマじゃないかと思うんですよ。

 セルフパブリッシングも大勢のネット上の仮想読者に投げかけてみて、そこで捕まえた確実に買ってくれる読者を何人抱えられるかが、とっても重要です。移り気なところに投げて、一瞬わーっと盛り上がってすぐその勢いが消えてしまうってことでは、次の作品がどれだけ売れるか読めませんから」

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―― 前回、お話を伺った同人作家の方も“1000部”という数字に拘っていましたね。

読者を1000人抱えているか、これが1つの分水嶺になると鈴木みそ氏は語る

みそ 「そうでしょうね。1冊1000円くらいのものを買ってくれる人が1000人。そうすると1冊300円くらいだと、もしかするとそれが6000人ぐらいに増えるのかもしれない。

 そういった読者数を考えたときに、新人だとそれを最初に確保することができないじゃないですか。名前を売るっていうのは、読者数をある程度確定することだと思うんですよ。

 売って、名前が広がるということは、もうすこし安かったら、例えば100円だったら買ってもいいよ、という裾野を広げていって、それによって回収できるってことかなと」

―― いきなりセルフパブリッシングしました、では上手くいくはずがなくて、やっぱり出版社から商業出版で紙の本を出すということが、ブランドの確立につながりますか?

みそ 「ですね。それに経費がそこでペイしますよね。だからこそ電子出版した分が全部足し算に、プラスからのスタートになっていくので。電子ですべて経費まで賄うとなると、ハードルがめちゃめちゃ高くなりますから。

 紙で本が出るというのは、少なくとも編集担当の目や出版社の稟議といったフィルターを越えていったことも意味します。作家経歴が長い人であれば、『ここは個人で持ちますから』って言えるけども、新人ではそういうわけにもいかないでしょう」

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