「社内メールをGメールに切り替えた。運用コストの安さと、導入スピードの早さが決め手だった」。大手メーカーの情報システム部門トップはそう話す。
近年、グーグルのサービスをビジネスに取り入れる動きが加速している。グーグルのビジネス向けツール「グーグルアップス」を導入している企業は500万社以上。米フロスト&サリバン社の2014年の調査によると、89%の回答者がグーグルアップスに満足しているという。
一方で、問題もある。「例えばメール一つをとっても、Gmailでは細かく設定ができない。ポリシーの変更で、レイアウトが変わったり機能がなくなったりする」とユーザー企業の関係者はぼやく。企業側がコントロールできる範囲が狭いのだ。
もちろん、企業は利用規約にも口出しできない。先日、グーグルはサービス利用規約を改定。「我々グーグルはメールを含むユーザーのコンテンツを自動で分析し、カスタム検索や広告、スパム・マルウェアの検出といった、ユーザー個人に関係する機能を提供する。この分析は、コンテンツが送受信または保存されたとき実行される」と明文化した。グーグルはGmailの中身を自動でスキャンし、パーソナライズに役立てているのだ。
冒頭の情報システム部門トップは「セキュリティー面では第三者認証や端末制限などの対策を講じているが、懸念がないわけではない」と、グーグルのスキャン対策については言葉を濁した。企業へのクラウドの導入を推進する情報処理推進機構(IPA)の担当者も、「クラウドサービスを使う場合、多かれ少なかれ自分のデータを事業者側に渡す必要がある。利用には割り切りが必要」と指摘する。「だからこそ『あそこなら(使っても)大丈夫』という信用の問題が出てくる」(IPA担当者)
ユーザーにどう安心感を与えるか。その観点から見ると、グーグルは一つ失敗を犯している。グーグルが地図作成の目的で受け取った空港やビルなどの図面が、ネット上で誰でも閲覧できる状態のまま掲載されていたことが明るみになったのだ。
この事件はグーグルアップスにおけるGmailの自動スキャンとは違い、あくまで人為的なミス。性質が違うものでひとくくりには語れないが、「グーグルに渡した情報が漏洩した」という意味で、イメージダウンは避けられないのも事実だ。
クラウド企業が直面する信用問題。確かにグーグルのサービスは便利だが、ビジネスに利用する場合には、今一度問い直す必要があるだろう。
「そのデータ、グーグルに預けて大丈夫?」
