7月20日、グーグルは都内のホテルで企業ユーザー向けのイベント「Google Enterprise Day」を開催。それにあわせて来日したエンタープライズ部門の副社長がエンタープライズ戦略やユーザー事例を披露する発表会を行なった。
Google Appsはデスクトップの延長にあらず
発表会において米グーグル エンタープライズ グローバルセールス&ビジネスデベロプメント 担当副社長のアミット シング氏は、まず「世界中の情報を整理して、アクセスし、使えるようにする」という同社のミッションを説明。こうしたミッションを企業において実現するために、検索、地理空間技術、アプリケーションという3つの分野でサービスを提供していると説明した。このうちGoogle Appsは急成長している分野の1つであり、「現在8000万のユーザー、300万の法人で使われている。グローバルでは、毎日3000以上の企業がGoogle Appsを導入している」(シング氏)と実績を強調した。
。オンラインのオフィススイートやGmailのようなメールアプリケーションで構成されているGoogle Apps for Businessは、チームのために設計されたアプリケーションで、デスクトップの延長のようなOffice 365とは根本的に異なっているという。シング氏は、「Webブラウザのプラットフォームなので、そもそもデスクトップOSが必要なく、どのようなデバイスでも使える。年間1人のユーザーが500円で利用できるのも大きい」といったメリットをアピールした。
「BCPを考えれば、海外の方が安全」という声
Google Apps for Businessは、国内でも導入が増えており、BCP見直しの機運が高まった震災以降はなんと50%もユーザーが増えたという。エンタープライズ部門 シニアプロダクト マーケティング マネージャー 藤井彰人氏が、中古車販売のガリバーや旅行代理店大手のJTBなどの国内でのユーザー事例をビデオで紹介した。同日には、ソフトバンクグループ3社が2万6000人規模でGoogle Apps for Businessを導入したことも発表されている。
また、Google Apps for Businessの導入を進めている戸田建設の佐藤康樹氏が登壇し、Google Apps for Businessに決定した経緯を「BCP対応のためにGoogleを選択した」と断言した。同社は2011年2月に現場事務所が放火された事件があり、データが完全に失われたという。そして、その後3月の震災があり、「サテライトオフィスのデータをいかに保護していくのかが大きなテーマだった」(佐藤氏)という。しかもメールサーバーを運営しているベンダーがデータセンターを静岡に移すという計画があったため、Google Apps for Businessへの移行を決断。「グーグルはプレートを考えてデータセンターを構築していると聞いているし、この際世界中に分散して保管されているグーグルにメールを格納したほうが安心と考えた」(佐藤氏)という。以前からGoogle Map APIを使ってサテライトオフィスのBCP対策を行なっていたが、秋口までにGoogle Appsのメールやスケジュールを導入する予定だという。
また、託児施設や介護施設を運営するポピンズコーポレーションは、Google Appsのスプレッドシートを使って各震災後の被災状況をまとめたという。「いろいろ安否確認システムなどが必要だった。しかし、中堅中小企業は難しい。アイデア1つで瞬時に実現できてしまう。クラウドならではだ」(藤井氏)という。
販売代理店も昨年は100社程度だったが、すでに倍増しているとのこと。藤井氏は「Google Appsというとクレジットカード決済のみというイメージがあるが、エンタープライズ分野ではそれは当てはまらない」と説明し、パートナー重視の姿勢を明らかにした。