いろいろなアプリがあっていい
日本交通のように、配車アプリで先行する会社にとって、スマホ de タッくんへの協力/加盟で得られるメリットは正直小さい。逆に、スマホ de タッくんによって、同じ配車エリアをカバーする「日本交通タクシー配車」アプリの利用者層が奪われるリスクもある。見ようによっては、日本交通はサービスの競争相手を、自らの手で後押ししたと言えなくもない。
とはいえ、日本交通は業界の老舗であり、業界全体への貢献も使命として背負っている。今回は、個の利益の追求よりも、そちらを優先させた格好だ。さらに日本交通の川鍋 一朗 代表取締役社長は言う。
「我々の配車アプリが100万ダウンロードを突破したと言っても、スマートフォン経由でタクシーを呼ぶスタイルは、まだまだ世の中に定着していない。その定着や広まりを加速させる意味では、いろいろな配車アプリがあっていい」
日本交通タクシー配車のアプリは、2011年初版のリリース以後、利用者の声を起点に、配車予約や時間指定、ネット決済など、さまざまな機能が追加されてきた。今後も、利用者の要望を吸収しながら、ネット決済や個別化の機能を中心に、機能の洗練化、強化を図っていく模様である。また、日交データサービスでは、日本交通の配車アプリの開発や機能改善の進捗確認などを目的に毎週1回の頻度で定例会議を催している。その場には川鍋社長も同席し、ユーザーインターフェースの1つ1つにまで細かな要望を出しているという。先行者の利は、機能とサービスの差別化による利便性のアップによって確保していく方針のようだ。