ゲームやコミックをきっかけに日本語を学習
でも大人になって卒業する人が多い!?
――ゲーム機はどうですか?
シンルさん「ゲーム機を買ったのは、ニンテンドーDSからで、海賊版でやってました。好きなのはマリオシリーズ。PSPも2007年に買いました。でも今は海賊版はないので買ってますよ。」
かすみさん「ファミコンから、PCに、それからニンテンドーDS、PSP、3DS、PS Vitaと遊んできました。日本のゲームを遊ぶ内に、変な文字がいっぱい出てきて、なんだろう、と思いました。50音から勉強し始めて、高校生のときから日本語を勉強し始めて、大学は日本語学科を選びました。」
――どんなコンテンツが好きですか?
かすみさん「犬夜叉とかフルーツバスケットとかいろいろ買ってました。ゲームはメルルのアトリエとか、トトリのアトリエとか、ロロナのアトリエとか…アトリエシリーズが一番好きです!」
シンルさん「2004年くらいから動画がみられるようになって、それまではドラえもんとかクレヨンしんちゃんしかなかったけれど、それで人生変わっちゃった感じです。最近ではbilibili動画(ニコニコ動画似の動画サイト)で和風総本家とかも見てます」
かすみさん「学生のころは、マンガ好きだった人が普通だったから変ではなかったんです。高校時代は日本のモノに興味があったのに、いつのまにかお兄ちゃん(シンルさん)しか日本好きがいなくなった」
シンルさん「大学卒業すると忙しくなって、必要がなくなるのかな。僕たちは同世代がする、酒飲んで買い物に行って、ショッピングしてってのがつまらない、やりたいと思わない。僕らの町には日本が好きな人がいるし、日本語勉強仲間やコスプレサークルの友人はいるけど、ここまで好きな人はたぶん僕ら2人しかいない(笑)。上海ではもっといるだろうし、イベントもやっているので羨ましいですよ」
――変わった人なんですね。
シンルさん「日本は二次元が日常のようで、今も心ひかれます。中二病が強くて頑固で一途なのかも。」
かすみさん「そう思います。周りのひとより想像力・妄想力が強くて2次元こそが世界で、そこに夢中なんです。」
シンルさん「ここまで日本が好きな人を精神日本人って言っているんですよ。なんでも日本が好き、日本で育ちたいっていう。精神日本人以外にも、精神アメリカ人とか、普通の生活が好きではない人、自分で好きなことを捜す変人が集まる小さなコミュニティーサイトがあって、いろいろ日本とかの情報交換をしてるのですよ」
★
というわけで、とても日本好きなシンルさん・かすみさん夫妻。2人にとって日本はいうなれば「2次元の国」のようだ。2人とも幼少期から極めて高価なパソコンを与えられ、様々なコンテンツに触れて日本通になっている。自分を精神日本人とまで言い、家の中も日本製品で揃えているが、こうした人は同じ都市の中では極めてレアだという。中国でSNSが発達し、同じ都市で同じ趣味の人が容易に見つけられ、オフ会をしているので、本当にほかにはいないのかもしれない。
中国人の隠れゲームファンやアニメファンは多いと思う人もいるだろう。しかし学生から社会人になり、社会人なりの金を使った娯楽にシフトし、アニメやゲームから卒業する中国人も相当数いるようだ。日本のアニメが好きで日本に関心を持つ層が学生であれば一見多そうだが、消費はあまり期待できない。
2人は日本語学習がきっかけの友人の中国人をしばしば呼んで、Wiiカラオケ(ちゃんと支払ってる)でカラオケ大会をしたり、格闘ゲームで対戦したりして、日本のモノやサービスやコンテンツを伝えている。
尖閣の問題には「僕たちの生活には関係していないので」と一蹴。とはいえシンルさんは、日本のネットのニュースや書き込みも勉強のため見ているが、「正直中国のそれと変わらないと思いました」と少々幻滅する一面も見せた。どれも日本のリアルではあるが、日本で中国人のネットの書き込みを翻訳する記事があるように、中国でも同じように日本のネットの書き込みを見ている人がいることを意識した方がいいのではないか。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)。
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