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2014年、コンピュータは大きな岐路に立っている by 遠藤諭

2014年01月07日 11時50分更新

文● 遠藤諭/角川アスキー総合研究所

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8インチWindows 8タブレットの正体はなにか?

 マイクロソフトのウェブサイトに行くと「Surface RT - 最初の Microsoft タブレット」と書かれている。Windows RTは、やはりタブレットを想定したOSだと思うのだが、それではなぜクラシック環境まで持つ必要があったのか。タブレットの魅力はシンプルさであって、タイル画面だけで、iPadと正面から戦うべきだったのではないか?

 もっとも、タブレット市場は、iPadの牙城はなかなか突き崩せないという話があって、Androidが健闘しているのも7インチだといわれている。実のところ10インチクラス(iPadは9.7インチ)と7インチクラス(GALAXY TabやNexus 7などは7インチで、iPad miniは7.9インチ)は、少し性格が異なるデバイスだ。前者は、米国で“メディアタブレット”という言葉があるようにコンテンツプレイヤーの性格が強く、後者は、システム手帳的に持ち歩いて使う情報端末的な性格が強い。

Miix 2 8

 仮に、Windows 8がいままで使ってきたソフトウェアがそのまま使える情報機器という性格が強いのなら、最初から7~8インチを出すべきだった。ところが、マイクロソフトは逆にWindows 8で、7インチや8インチのタブレットを認めなかった。もっとも、いま8インチのWindows 8が売れているのは、ハードウェア的な完成度が上がって、紙のような薄さ軽さ(iPad miniの331グラム=WiFiモデルに対してレノボのMiix 2 8はPCにもかかわらず350グラムだ)とギリギリの操作性のバランスの上にある。こんなミラクルなものは予測できなくても、バルマーを責めるスジではないのかもしれないが。

 それでは、Windows 8は、これからどうなるのか? 一説には、同社は、Windows RTやWindows Phoneのライセンスを無料にするという。しかし、確実に市場があるのはやはりWindows 8だろう。“艦隊これくしょん”や“World of Tanks”といった追い風があるという話もあるが、コンピュータも生物の進化と同じくひたすら複雑化していくのかもしれない。1964年代に誕生したIBMの銀行で使われているような大型機アーキテクチャが消えないように、50年くらいは生き残る可能性もある。

iPhone、iPadの次に、アップルがめざしてほしいこと

 Macについても、Windowsと似たような状況はあって、Mac OSにiOSがつくという噂があるそうだ(iOSの中身はMac OS Xだが)。MacBook Airは、モバイルのスタンダード的な立ち位置になってきているし、iPhoneも、iPadもきれいにすみ分けされているからその必要があるかどうかは疑問だが。それよりも、個人的にアップルに期待したいのは同社が11月に買収した「Prime Sense」というモーションコントロールの技術をどう生かすかである。NUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェイス)について、アップルは、音声エージェントの「Siri」があるし、iPhone 5sでは「M7モーションコプロセッサ」ものせた。

 インテルも「PerC」というモーションUIの技術を持っているが、アップルには、会議室での大型スクリーンを前にしたやりとりをエレガントなものにしてほしい。これは、“iTV”と呼ばれていていまだスケジュールも聞こえてこないアップル製テレビとも関係すると思う。先日、パナソニックの4Kテレビ(スマートビエラ WT600シリーズ)で、最大27チャンネル24時間のラテ欄表示を見せてもらったときに、未来のテレビは情報ディスプレイでもあると確信した。ということは、自在に画面上のオブジェクトをあつかいたいからだ。

フェイスブックがグーグルになる、つまりスマートフォンも作る

 世界の20億のネット人口の約半数がフェイスブックを利用中だそうだ。ソーシャルメディアだから人のつながりはもちろんのこと、主要な写真やビデオのアップロード先であり、スケジュールや人の行動や趣味も記録される。昨年末に、グーグルのエリック・シュミット会長が「ソーシャルネットワークの興隆を予期できなかったのは私の最大の失敗だ」と述べたのもこのためだ(米Bloombergによる)。日本でもベータ版が始まっている「グラフ検索」によって、自社だけがフェイスブックの中身を独占的に検索できる。グーグルにとっては、ネット人口の半分の行動に対して目隠しされたような気持ちだろう。

 一方、1年ほど前に話題となったフェイスブック製のスマートフォンは、「Facebook Home」というホームアプリだったというオチだった。しかし、同社は“Open Compute Project”(サーバーを大量導入するプラットフォーマーの立場でハードウェアを見直す)でハードウェアメーカーをあせらせた会社である。実は、スマートフォンを設計するプロジェクトはいまも進行中だという。これは昨年8月に、同社が世界中の人にインターネットを届けるために設立した団体internet.orgで明らかにされた。そもそもこういう大きな話はグーグルが好きな話題だったはずなのだが。

 iPhoneが、リッチインターネットに対するアップルなりの答えだったのだとすると、ネットにすべて帰っていくべきだとも思えてくる。そのときには、ハードウェアもネットと同じように限りなく誰にでも開かれているべきだという議論にもなるだろう。現状、モバイルしか想定していないが、Mozilla財団のFirefox OSは、そういうことだと思うのだが。しかし、主要なプラットフォーマーはいずれもこれからのコンピュータについてまだまだやる気でいる。というよりも、ハードウェアの役割が今後ますます大きくなると考えている。

遠藤 諭(えんどう さとし)

角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。『月刊アスキー』編集長、アスキー取締役などを経て、2013年より現職。スマートフォン以降に特化したライフスタイルとデジタルの今後に関するコンサルティングを行っている。『マーフィーの法則』など単行本もてがけるほか、アスキー入社前には『東京おとなクラブ』を主宰。著書に『計算機屋かく戦えり』など。『週刊アスキー』にて巻末連載中。

・TwitterID:@hortense667

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