インドでは、元々PCを持ってない人々がPCの代わりに使う、というタブレットニーズがある。
大都市においては、路線バスや通勤電車の中、ショッピングセンター内、大学キャンパス内などで、フィーチャーフォンユーザーや電話帳を眺めるだけのスマートフォンユーザーがいるが、その一方で、ちゃんと使いこなしているとおぼしきタブレットユーザーをしばしば見かける。
今回はそんなインドの大都市で、ある比較的貧しい家庭にステイし、タブレットを買ってあれこれインストールするまでの庶民視点のレポートをお届けする。
普及率は低いがメーカーは本気!
インドのタブレット市場
本題の前にインドのタブレット市場の現状について紹介する。12月に発表されたデータによれば、インド国内7~9月の3ヵ月間で120万台のタブレットが出荷されたそうだ。加えて各都市の電脳街では、統計に含まれているか怪しい中国から輸入したノンブランドの製品も見かける。
120万台というのは前年比9%増であり、同年4~6月の3ヵ月で中国では3倍の360万台弱が出荷され、今年1年で中国のノンブランドのタブレットは世界市場に8000~9000万台出荷されている。その数字が前年比60~80%増であることを考えると、決して多い数字ではないし、普及が加速しているとも言い難い。
とはいえインドメーカーはタブレットの新製品を積極的にリリースしているし、メーカーの人に話を聞くと、パッケージングだけでなく組み立ても含めメイド イン インディア(デリーの近くのNoidaという都市に集中)なのだとか。
シェアでいうとサムスンが安定して最も高く、続いてレノボが最近シェアを伸ばし、3位に「世界最安タブレット」(関連記事)をうたう「Aakash」をリリースした「Datawind」が続く。その後にAppleやインドではスマホやタブレットで認知度の高い「Micromax」が入ってくる。
タブレットってどこで売ってるの!?
情報家電に疎い夫婦に聞いても分からず……
さて本題。筆者が訪れたのはインドの東方の大都市、「コルカタ(旧カルカッタ)」の市内のとあるイスラム教信者のお宅。
農村出身で収入は低いが、中学生(1年と3年)になった2人の息子の教育のため(農村の教育レベルが低いため)に、コルカタに出てきている。
以前は夜は主人が外に出て寝るほど小さい、日本で言えば学生向け1K程度の家に住んでいたが、最近引っ越して月1万ルピー(約1万7000円)の1DKの家に住みはじめた。
家には家電ではサムスンの液晶テレビとラジカセと小さな冷蔵庫があり、板張りのベッドとカーペット、それに息子2人の教科書が積んである。
中国なら夫婦共働きが基本だが、インドではそうもいかず(風土的なもの)夫が一人働き、妻は家で家事に徹し、この家庭では外出もさせてくれない。妻は旦那の仕事ぶりにため息が出るも、「いつかはお金を貯めてマイホーム」と思っている。
モバイルは夫がノキア、妻がサムスンのフィーチャーフォンを所有しているが、妻は夫婦喧嘩で旦那が投げて液晶を割ったフルキーボードのケータイを使い続けている。
ケータイからはFacebookが利用できるが、データ通信費は安いとは言ってもデータ通信を倹約しているし、そもそもFacebookを知らない。外出は夫が「危険だ」と喜んでくれないので、リアルな友人も作れず、Facebookを知る手段もない。
近所にコルカタ随一の大型ショッピングセンターができ、筆者とともに一緒に外出したときには、そこにApple代理店があったが、iPhoneが何なのか、ブランド価値があるのかも知らなかった。
そんな家庭だ。それでも英語が堪能な2人の中学生の息子は友人との情報網の中で、PCやスマートフォンやタブレットは何なのか、何ができるのかを知っていて「そんなの常識さ」と鼻で笑っていた。
筆者はこの家庭に興味を持ち、彼らが情報端末を使って願わくば人生を変えてほしいという気持ちでタブレットを探した。探してみようとするも、この家の大黒柱は近所の家電屋しか知らず、連れて行かれるものの、白物家電やテレビが売ってるだけでタブレットは売っていなかった。
結局、自身の足を使ったが、スマートフォンを売っている店はあれ、タブレットを売っている店は非常に数が限られており、見つけるのには骨が折れた。
インド人(に限った話ではないが)がいざタブレットを探すにも、「タブレットがわからない」「金がない」「どこで売ってるかわからない」など、ないない尽くしなのだ。
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