Googleのパンダアップデートによる情報品質評価の強化やスパムリンクネットワークの撲滅、有料リンクへの厳しい対処、UGC(ユーザーによる投稿・作成がコンテンツの中心となるサイト)運営者への管理責任の要求などの流れの中で、過去は理想論で片付けられていた Content is King、つまり「コンテンツの重要性」が認識されるようになってきました。
日本の企業でもコンテンツ企画運用に力を入れ始めたところも出てきましたが、やはり、ちょっと首をかしげたくなるような施策を行っているのも事実。ここでは代表例を5つ紹介したいと思います。
勘違い事例 1. クラウドソーシングによる低品質なコンテンツ生産
1記事あたり数百円といった安い単価でクラウドソーシングを通じてコンテンツを大量発注しているケース。Google がウェブマスターに伝えたいことは、「読み手にとって役立つ、有益な質の高い情報を提供せよ」ということです。
※ クラウドソーシングを通じて出来上がる全てのコンテンツが低品質とは思いません。しかし、安い報酬でまともな文章がどれだけ期待できますか?
単にコンテンツの数量を増やそうと、自動翻訳技術を悪用して外国語文書を日本語変換して毎日記事追加したり、中国やタイ、ベトナムなどから不自然な日本語文章を大量輸入したりと、とにかく「見かけだけのキーワード文字列を含んだ情報」だけを増やした上で、「こんなSEOしています。順位上がりますよね?」と質問されても回答に困ります(実話)。
誰がそんなものを他人に共有したいと考えるでしょうか。
勘違い事例 2. 自然リンク獲得のために、突拍子もないネタばかりを必死に考える
大事なことは「継続的に、良質なコンテンツを発信し続けること」なのです。特定のイベントやキャンペーンにあわせて面白おかしな企画を考えて、バズを作り出し、みんなの支持や共感を得るという方法自体は良いのですが、"継続的に" 行うことは難しいですよね?
そういったキャンペーン企画を時折交えつつ「継続的に、見込み顧客の人たちにとって役立つであろうコンテンツをどう作成していけばいいんだろう」ということは、やはり考えないと行けないのです。
(ここが大きな課題の1つなんですよね)
勘違い事例 3. 検索上位に表示したいキーワードを含んだコンテンツを大量生産
一般的に検索エンジンは、あるトピックや話題について、詳細な、深い分析や考察が行われている充実したコンテンツを持つサイトを関連性が高いと評価します。あるジャンルにおいての専門性が高いサイト、オーソリティーなどと表現されることもあります。
この「情報の充実性」の観点から、ある事柄(≒キーワード)についての情報量を充実させること自体は間違いではありません。しかしながら、それは"最近のコンテンツマーケティングが言いたいこととは違う"ので注意して下さい。
その情報の充実性のお話は、2004年頃から提唱された「オーソリティーサイト」の必要要件の1つなのです。以前から行っていて当然の施策ですし、逆にこうした発想もなしに、その狙いのキーワードの検索順位を上げようと思っていたのであれば、今まで間違った理解をしていたということになります。
最近SEOの専門家達が叫んでいるコンテンツマーケティングの重要性というのは、「継続的に優れたコンテンツを発信することにより、ユーザーと交流し、関係性を深める、支持を得る」ことにあります。
また、このマーケティング施策は、特定キーワードの検索順位を上げるという発想に立っていません。そうではなく、あなたのサイトの全体的な、検索を通じた情報の発見性(Discoverable、あるいは Findable)を高めることを狙いとしています(参照:検索とSEOとソーシャルの話 - リンクは「サイト」から「人」へ)。
特定ターゲットキーワードの検索順位を上げることと、オーソリティーサイトを築くことは、違います。コンテンツ主導型の外部リンク構築(Content Driven Link Building)やコンテンツマーケティングなど、コンテンツを主とおいたマーケティング施策は基本的に後者を想定しています。前者を思い浮かべるのは日本特有です(※ 米国でも同種の人たちはいますが、超大企業が平気でウェブスパムに手を染めている日本ほど酷くない)。
日本国内では、相変わらず SEO=特定キーワードの順位を上げることである、という間違った認識のもとでSEOを駆使しているサイト運営者も多いため、上記のような事態が起きてしまっているのだと考えています。しかし、ここ1~2年の間に重要性が叫ばれているコンテンツマーケティングは、「継続的に、商品理解や教育・啓蒙を促すための多様で有益な情報を発信していくことによりサイト全体の評価や信頼、評判を作り上げていき」「あなたのサイトにストックされた様々な情報を、ユーザーが必要な時に、容易に検索で見つけ出せるようにする」ことにあります。昔の表現を使えば、ロングテール、ヘッドキーワードからテールキーワードまで、多様な検索キーワードでの流入増加を図るための施策的な位置付けになります。
ある話題(≒キーワード)について情報を充実させること自体は悪いことではありません。でも、それではネタがつきますし、もっと、あなたの潜在顧客が知りたい事柄はたくさんあるはずです。「マンション 購入」と検索する人みんなが数日内にマンション購入したい人じゃないんです。何ヶ月も、あるいは何年も悩んで購入する人は、何を検討していると思いますか、そこに、あなたが提供すべきコンテンツのヒントがたくさん転がっているはずです。
勘違い事例 4. シェアしたくなる画像探し
「ビジュアルネットワーク」(Visual Network)はテキスト中心のネットワークよりも情報伝播しやすいのが特徴です。一般的に写真や動画はソーシャルメディアで共有されやすいですし、言語の壁がありませんので世界中に情報拡散させられる可能性もあります。
だからといって、本業と全く関係のない写真や動画探し(あるいは制作)ばかりしていて、本当に標的としたいオーディエンスに到達できるのでしょうか。
これは「クリックされやすい、シェアされやすいタイトル作り」でも同じです。「~すべき○つの理由」や「~するたった1つの理由」など、定型フォーマットを揃えたところで、内容が伴わなければいずれ来訪者に飽きられます。一昔前に米国で、人々の注意や関心をひくリンクベイトが流行りましたが、最近は語られることが少なくなりました。結局、ユーザーは薄っぺらな情報ばかりのサイトであることを学習するのです。
勘違い事例 5. SEOが考慮されていない
どんなに高品質で優れたコンテンツであっても、インデックスに登録されていないページは検索されません。Googleが適切に構造や内容を理解・解釈できないコンテンツもしかり。つまり、公開される全てのコンテンツは検索性(Findable/Discoverable)な状態でなければなりません。
例えば「1つ1つのページのタイトルタグには、内容に相応しい、適切なタイトルを書きましょう」こんな当たり前のことすら、ページビュー数でトップ20に入る日本の超大手ポータルサイトでさえ実行できていないのです(※ Googleはこうしたページを発見したら、自動的にタイトルにすべき文章を特定して検索結果に表示してくれますが)。検索エンジンが理解・解釈しやすい形式でサイト構造や文章が記述されていなければどうしようもありません。検索性の高いサイト設計が考慮されていることが大前提ですから、まず自分のサイトの現状を分析して、問題点をつぶしていくことが必要です。