このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

巨人ウォルマートは「調達力」でアマゾンに勝つ

2013年11月22日 07時05分更新

文● 腰 裕人(Hiroto Koshi)/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ウォルマートの調達網で「エブリデー・ロープライス」

「スケールメリットの実現には、オークション、ウォルマート価格の適用、輸送費の削減の3つのポイントがある」(ボッケル氏)という。「オークション」とは今年から始まった取り組みで、商社機能を持つウォルマートグループの子会社が、世界中のグループ会社に呼びかけて共同で入札し、大量仕入れで原価を抑えるというもの。例えば、オリーブオイルでは、11カ国のグループ会社が共同で競り落とすことで、今まで取り扱っていたオリーブオイルの原価よりも、8%から10%のコスト削減を達成している。そのほか、「ウォルマート価格の適用」とは、巨大な小売店網を持つ米国のウォルマートと共同で調達し、同等の仕入れ価格で購入すること。「輸送費の削減」はウォルマートグループとしての輸送量を元に船会社と交渉し、輸送費を削減するというものだ。

ウォルマートではグループ内の5つの社内商社機能を活用し、グローバルな調達網を構築している

 西友がウォルマート子会社となったのは2005年だが、ここ最近になって商社機能を持つグループ子会社が中心となって世界規模で調達したり、西友もそのようなグローバル調達に参加するなど、ウォルマートグループが一丸となって調達効率を上げる体制が整ってきたという。

 グローバル調達した低価格のオリジナル商品はリアルの実店舗のみならず、EC事業での競合対策にもなる。西友は今年6月、ネットスーパーとEコマースを融合したオンラインショッピングサイト「SEIYUドットコム」をオープン。「エブリデー・ロープライス」の強みに加え、ウォルマートの米国子会社であるウォルマートUSからの直輸入商品を集めた「アメリカンコーナー」を設置した。現在は870円ボジョレーヌーボーも販売しており、実店舗同様、ネットでも今後グローバル調達した直輸入商品を拡充する見込みだ。

西友のショッピングサイト「SEIYUドットコム」でもボジョレー・ヌーボーを販売する

 経済産業省の発表では2012年の日本のEC市場規模は9.5兆円。前年比で12.5%成長している一方、EC化率はまだ3.1%と低い。明らかに来ると予想される「将来の伸びしろ」を獲るべく、EC最大手であるアマゾンや楽天といったネット専業のプレーヤーはもちろん、リアルの大手小売チェーンもEC事業に力を入れており、競争は激しくなる一方だ。

 特に「品揃え」と「低価格」は顧客の獲得、囲い込みの手段としてどのEC事業者もしのぎを削るところ。連結売上高611億ドル(2012年)のアマゾンに対し、全世界売上高4661億ドル(2013年1月期)というケタ違いのグループ力を発揮するウォルマート〜西友がECの世界にどのような影響を与えるのか、次の一手に注目したい。

前へ 1 2 次へ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中