「3年計画で、夢、活気、変化を作り出す」
このプログラムに同行してしているのは、ソフトバンクCSRグループの堀田真代氏。昨年のプログラム同様、堀田氏はバークレーに来る前から、高校生とコミュニケーションを取ってきました。生徒たちととも学生寮に泊まりながら、3週間寝食をともにするそうです。
堀田氏は2年目となる本プログラムについて、3年計画の真ん中の年、と位置づけていると語ります。
「2012年からスタートして、1年目は300人の高校生を迎えて、これまでになかった経験を積んでもらい、可能性を見出し、被災地に夢を与える役割を担ってもらおうと考えました。2年目に当たる今年は、すでに経験している300人とともに、被災地に活気を与えることがゴールだと考えています。そして来年3年目はこれらの総括として、東北地方に変化をもたらすことを目指します」(堀田氏)
また、ソフトバンクが大きくなっていく過程をともに歩んできた堀田氏は、企業が大きくなってきてベンチャースピリットが薄れてきたことに触れた上で、その打開策を探るために、ソフトバンクとして内外の成功している起業家に話を聞いて回っているそうです。
その中で、起業家に共通する最も重要なことは「絶対的な当事者意識」だったそうです。こうしたエピソードを紹介し、高校生たちに次のようなメッセージを送りました。
「3週間、様々な新しい体験をすることになりますが、その間、そして地元に帰った後も、自分が何をしたいのか、自分が何をすべきかということを意識し、当事者として行動して欲しい」(堀田氏)
こうしたスピーチに真剣に耳を傾ける参加した高校生たちの目には、生き生きとした活力と、これから3週間の学びへの期待が満ちあふれていました。
高校生が学ぶ、Y-PLANとは?
3週間のサマースクールでは、セレモニーの後のウェルカムディナーのバーベキューを皮切りに、大学寮での生活、ホームステイ、野球観戦など、アメリカらしいさまざまな体験が待ち受けています。しかし学びの部分も非常に興味深いプログラムが用意されていました。
高校生らを受け入れるのは、UCバークレーのCenter for Cities and Schools(CC&S)。若者たちがリーダーシップや計画作りを学び、実際の行動に結びつけることで、地域の街作りに参画することを実践・発信する研究機関です。ここで用いられているのが「Y-PLAN」と呼ばれるプログラムです。
CC&Sを設立し、Y-PLANを世界中に広めているDeborah McKoy博士は、Y-PLANについて、次のように説明しました。
「Y-PLANとは、Youth・Plan・Learn・Act・Nowの略で、若者が学び、行動するために計画を立てること、またそれそのものを学びとして吸収するための教育法です。ひとりひとりが社会を変えていく一員であることを自覚し、どのように現状を分析し、持続的な変化をもたらすのかを考える人材(リーダー)を育成することを目的としています。
これまでY-PLANは、世界中の2000人を超える子供たちを輩出してきました。例えば、ハリケーン被害に遭ったニューオリンズやニューヨークの街の再興にどのように取り組むかを考え、実際に行動しはじめています。また世界の中で最も情熱的に取り組む生徒がいるのが東北地方です。
昨年の生徒たちは、若いリーダーとしてお互いを尊重しあい、お互いの価値観を持ち寄って、未解決の問題に以下に取り組むかを学んでいきました。その結果をみても、最も革新的なアイディアを持つ若者が集まる場所と言っていいでしょう」(McKoy氏)
これからの3週間、様々な課外活動とともに、英会話とY-PLANのリサーチや議論、プラン策定を、バークレーという街を舞台に学びます。その上で、最後の3日間は、自分たちが住む東北地方の問題解決に向けて、アクションプランを立てる予定です。
筆者の住んでいるバークレーについて、どのような問題を発見するのか。また、最後の3日間の前提となる、彼らが感じている東北地方の現状はなにか。その解決へどのような道筋を導き出すのか。よい学びをたくさん得られる3週間になることを祈っています。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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