飛行機の中でのケータイによる通話やインターネットの利用が少しずつ緩和の方向で進んでいる。国際線を中心に、Wi-Fiサービスの提供は増えており、通話についてもごく一部ではあるがOKにしている航空会社が出てきた。どうやら、仕事のメールや電話に追われることがない“聖域”はそのうちなくなってしまいそうだ。

機内Wi-Fiサービスを提供している航空会社の表示
技術的には可能
だが「通話はお控え下さい」がほとんど
British Airways(BA)では7月1日から、飛行機が着陸後に滑走路を離れて誘導路に入ると、携帯電話が利用できるようになった。
これまでは「携帯電話のご利用は飛行機が完全に停止し、扉が開くまではお控え下さい」で、ゲートに到着するまで電源オフだったのが、飛行機がタキシング状態に入ると電源をオンにして通話できることになる。
といっても、長くてもせいぜい10分くらいの間で、現実には飛行機が着陸するとさっさと電源を入れて、メールチェックしている人は多かった。それもこれからは堂々とできる。ただ、ロンドン・ヒースロー空港は世界有数の混雑空港で、着陸してもゲートまでたどり着くのに時間がかかるという事情もある。
BAはこれにあたり、英国の規制当局である民間機航空安全局(CAA)の承認を得ているが、利用は着陸時のみ。離陸時はこれまで通り、扉が閉まった後の通話や携帯電話の利用はNGだ。
では、フライト中の携帯電話の利用はどうか。BAは2009年より一部区間(ロンドンーニューヨーク)でエアバスA318機材を利用したフライトにおいて、携帯電話の利用ができるサービスを提供している。高度が1万フィート(約3000メートル)に達して安定飛行に入ると、GRPSを利用したテキストメッセージやメール、それにブラウジングが可能。だが通話はできない。
BAはこのためにスイス・OnAir社のソリューションを導入している。OnAirのソリューションは、機内に搭載したピコセルと衛星を利用するもので、同じくOnAirを導入しているEmirates Airlineでは通話も可能だ(Emiratesは日本にも就航しているが、OnAirのシステムを設置しているエアバスA380機材は現時点では日本発着便では利用されていない)。
つまり、BAが通話を許可していないのは技術上の問題ではなく、単に他の乗客への配慮なのだ。飛行機では相手の声がうるさいからといって他の場所に移動することが難しい。そのため、BAはSkypeなどのVoIPサービスの利用も禁止している。
OnAirはこの分野の大手でトライアルを含むと30以上の航空会社を顧客に持つ。だがEmiratesのように通話もOKにしているところは少数派のようだ。最近の例では2012年にVirgin Atlanticが、やはりロンドンーニューヨーク間での通話をOKにした。VirginはAeroMobileのソリューションを採用、今後通話が可能な区間や機材を増やす計画だ。

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