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「米ハフィントン・ポストの衝撃」が本日発売

2013年07月10日 11時00分更新

文● アスキー新書編集部

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急成長を遂げる「ハフィントン・ポスト」とは何か?

Image from Amazon.co.jp
メディアのあり方を変えた 米ハフィントン・ポストの衝撃 (アスキー新書)

 米国の新聞メディアの衰退が社会問題になり久しい。多くの地元新聞メディアが廃刊や他媒体との吸収合併を繰り返し、大手メディアでさえベテランのジャーナリストの首切りを行なっている。

 原因は掲載される広告の減少だ。2004年以降下がり続けており、2008年に起きた“リーマンショック”を境にして急下降をたどる。2009年末に急激な下降トレンドは収まったものの、前年比数%減の状況がが続くのは2012年になっても変わらない。

 そんな中、急成長を遂げたメディアがある。それが2005年にアリアナ・ハフィントンを軸にしてオンライン上で生まれたネット新聞「ハフィントン・ポスト」である。保守系のBlogメディア「ドラッジ・レポート」に対抗する形で誕生し、リベラルな論調を主軸としている。特筆すべきは、このサイトが抱えているセレブ・ブロガーだ。現米大統領のバラク・オバマ、前米国務長官であるヒラリー・クリントン、マイクロソフト会長のビル・ゲイツなど、政界・財界、メディアなどで多大な影響力を持つ人々が集まっている。

 2013年5月、日本でもサービスを開始したが、こちらも有名ブロガーを多数集めており、アリアナ・ハフィントンのトップセールスという形で安倍首相のハフィントン・ポスト参加も発表された(関連記事「ザ・ハフィントン・ポスト日本版本日スタート!」

アリアナ・ハフィントンとは何者なのか?

 ハフィントン・ポストの共同設立者のアリアナ・ハフィントンは、1950年生まれの63歳。ギリシア生まれで、ケンブリッジ大学卒業後にBBCラジオのパネリストとして活躍し、23歳のときに「フィーメイル・ウーマン」で作家デビュー。その後アメリカに渡り、世界的なオペラ歌手であるマリア・カラスやパブロ・ピカソの伝記を記してベストセラー作家の仲間入りをしている。結婚を機にアメリカの政界に携わるようになり、2003年にはカリフォルニア州知事選に出馬。アーノルド・シュワルツェネッガーの対抗馬としても注目された。

 ベストセラー作家、ラジオパネラー、テレビ司会者、独立候補者といったいくつもの顔を持つ彼女であるが、2005年から力を入れたのが彼女の名前がメディア名にもなっている「ハフィントン・ポスト」だ。セレブブロガーを集めるアリアナ・ハフィントン、運営資金を調達するケネス・レラー、サイトのSEO対策で多大な貢献を果たしたジョナ・ペレッティやポール・ベリーを軸に、ハフィントン・ポストは急成長を遂げていく。2011年にAOLに買収される際には、3億1500万ドル(日本円で約300億円以上)価格が付き、2013年5月に日本語版が開始される際にはユニークビジター数は月間5400万人。全米のニュースサイトでは6位で、5位のニューヨーク・タイムズの月間6000万人に手が届くところまで来ている。

なぜハフィントン・ポストは成功したのか?

 ネット新聞と言えば、低コストで速報重視というイメージがあるかもしれない。しかしハフィントン・ポストでは、自前の記者による「独自報道(オリジナルジャーナリズム)」に力を入れている。2012年にはイランやアフガンで重傷を負って身体障害者になった軍人を追った連載記事「戦場を越えて」で、営利のネット媒体では初めてピュリツァー賞を受賞。紙媒体出身の経験豊富なジャーナリストを受け入れることにより、2010年には100名ほどであった編集部門は2012年には400人まで増加した。全米第4位の日刊紙「ロサンゼルス・タイムズ」の550人に迫る規模にまでなっている。

 アリアナ・ハフィントンはインタビューで「ブロガーの投稿をテコに言論空間を形成すると同時に、深い取材に裏打ちされた調査報道でニュースを掘り起こす。前者が新メディアとすれば、後者が旧メディアであり、目指したのは両者の融合」と答えている。この思想こそ、ハフィントン・ポストの成功の秘密だろう。

 日本でも良質な民主主義を求める声が日々高まっているが、その基本となるのは良質なメディアの存在だ。「米国の10年遅れ」と言われる日本の新聞メディア。急激な収益悪化に加え、読者のメディア不審が追い打ちをかけている現在、新聞メディアが生き残る道しるべとなるメディアが米国で誕生し、そして日本に上陸した。アリアナ・ハフィントンが出した解答が、日本の良き民主主義社会を作るに足りるか、まず一読して判断してもらいたい。

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