野田社長も増田副社長も、大手広告代理店の営業マンからの転身。しかし、「前はずっとスーツだったので気にしていなかったけど、起業して私服スタイルになると、なんかダサい。少なくとも、社長は会社の顔として、ファッションはちゃんとしてほしいと思った」(増田副社長)と、当時の野田社長のファッションセンスが問題になった。
とはいえ、自分では服もコーディネートもよくわからない。「誰かが選んでくれればいいのに」と思ったときに、「コーディネートに困る男性ってよくいるのでは?」と、このサービスを思いついたという。
「当時はアメリカで似たようなサービスが存在していたり、ECの分野でファッションが伸びてきている、という認識はありましたが、直接の動機になった訳ではありません。昔はアルマーニを着ていればいいとか、ブランドなどのお墨付きがあったけど、今はファストファッションでもいいし、コーディネートの目安がない時代。だからこそ、コーディネートの提案が求められていると感じたんです」。
サービス前に100人の女性にネットアンケートをした結果、「デートで男性の服装にがっかりした経験がある」が74%と高く、潜在的ニーズも感じ取っていた。さっそく始めてみると、1週間ほどで即100件のオーダーが殺到。いったん、受付を終了したほどだった。
個人のための「専属スタイリスト」を確立したい
事業が順調に伸びてきたことから、ランニングウェア専用プランや、今年5月からはファッションの代行購入サービス部分を省いた「提案だけ」のプランも始めている。提案だけのプランでは、衣服の原価が入って3万円以上の値段がついていた代行購入サービスより利用しやすいように、1コーディネートあたりの利用料を3000円と低く抑え、好評を博している。
ちなみに、スタイリストの女性たちはサイトの写真から選んで希望が出せ、メールでコーディネートについてやり取りしたり、購入したファッション一式には手書きの着こなしメモがつくなど、何となく「疑似彼女」っぽいサービスでもある。ズバリ、サービス人気の一翼を担っているのか、尋ねてみた。
「実は、スタイリストの希望なしで、おまかせの人が多いんです」と言う増田さん。「リピーターの人も多いけど、『服自体が良かった』とか『選んでくれてありがとう』みたいな、コーディネートサービス自体への感謝のメールが来ています」。
野田さんと増田さんはbemoolについて「美容院みたいな感覚なのでは。指名はできるけど、おまかせでもいいみたいな。タレントに専属スタイリストがいるように、一般の人もお金を払えば専属でスタイリストを持てる、という風になればいいと思う」と考える。
現在、月22%増ペースで顧客も増えており、男性向けサービスだけではなく女性への提案も始めたり、男性スタイリストを入れたりと事業を拡張しているが、今後の展開としては何か考えているのだろうか。
「bemoolはファッション系ECですが、特定のアパレルブランドと提携してマネタイズすることは考えていません。あくまでもニュートラルな立場で、いずれはファッションはすべてbemool経由で選んでもらう、っていう野望はあるんですけどね」と笑う増田さん。
拡大するアパレル業界とは裏腹に、もはや「服がありすぎて選べない」という根本的な問題も広がっている。次々と戦略を繰り出すアパレル、販売側ではなく、あくまでも個人の側に寄り添ったファッションのサービスとして、bemoolが新しいビジネスモデルを生み出すのかもしれない。