美しいベジエ曲線が奏でる夜の調べ……。ハァハァ
夏休みには少し早いが大人の自由研究をやりたい。テーマは「秘めたる果実から湧き出るアレ」。タイトルから百も承知だとは思うが、果実から出る電気について調べたい。夜に奏でる調べは、もちろん電子オルゴールだ。なんでも果物電池のサイトを見ると、LEDを点灯させるんじゃダメで、電子オルゴールを鳴らさないと気がすまないらしく、小学生が大人の階段を登る儀式になっているようなのだ。身の回り果物や野菜の曲線にハァハァしながら、自家発電できるか調べちゃうよ~。
レモンって半分に切るとオッ●イに似てるよね?
さて果物電池といえばレモン電池だが、筆者の周りには実際にやった人がいない! ASCII.jpの編集者連中はもちろん、ウチの晩餐会によく来る伯爵連中に聞いても、答えはノー。娘たち3人に聞いても、やったことがないと……。
もしやレモン電池は都市伝説? 国家の情報操作!?
ということで、レモン電池で本当に電子オルゴールが鳴るのかを確かめてみた。ただ電子オルゴールってのは、小学生には好都合なんだが、我々ASCII.jp傭兵部隊には不都合。なにせメロディーは写真に写らないのだ。そんなわけで、いちいちムービーまわすのも面倒ってワケじゃないが、LEDも光らせてみよう。果物電池に必要なものは、以下のとおりだ。
- 銅版
- 亜鉛版(なければ鉄板やブリキ、アルミでもOK)
- 電子オルゴール(バースデーカードからひん剥く)
- LED(その辺に落ちてる詳細不明なヤツ)
- クリップ付きコード
- 果物とか色々
まずは定番のレモンから試してみよう。レモンを2つに割って、そこに銅版を差し込む。反対側には亜鉛版を差し込んで、あとは両者の間に電子オルゴールを接続するだけ。
レモン1個を電子オルゴールに接続
まさに「蚊の鳴くような~」という感じで、極々わずかだが鳴っているのが聞こえる(ムービーだと音聞こえないかも?)。電圧を測ってみると、0.98V。ちと電池に比べて不足気味なので、レモン電池を直列にしてみると、1.9Vになった!
レモン2個を電子オルゴールに接続
レモン電池でLEDは点灯するのか!?
早速電子オルゴールにつないでみると、おー! 鳴る鳴る! どうやらレモン電池は都市伝説じゃなかったみたいだ。しかーし! オルゴールが鳴っても写真に写らないので、ASCII.jp読者は納得しない。そこでLEDを接続してみると。
さっぱり灯かネ。さらにレモンを2つ直列にして、ようやく薄暗く灯く程度だ。こっ、これはキビシー。レモン電池といえば電子オルゴールを鳴らすのが定番という理由が今ココに! レモン電池だとそもそも電子オルゴールぐらいしか鳴らせないってコトだったのだ。
そもそも何で果物が電池になるのか?
しかし何でレモンから電気が取り出せるのかイマイチ納得できない。でもフツーのアルカリ電池やニッケル水素電池だって、電気を取り出せるしくみを知る人は少ない。そこで歴史を振り返ってみよう。
一番初めに電池っぽい何かに気がついたのは、18世紀のイタリア・ボローニャにいたガルヴァーニさんというお医者さんだ。日本は江戸時代で杉田玄白が「解体新書」を発行したのとほぼ同じぐらい。それはガルヴァーニさんがカエルの解剖をしていたところで偶然に見つけた。カエルの足を鉄でできた固定具に引っ掛け、真鍮でできたメスを足に入れたところ、足の筋肉がピクリを反応したのだ。これを見て「筋肉って電気で動くんじゃネ?」という説を唱えたのだ。
その後ガルヴァーニさんの実験に興味を持った、同じくイタリア人のボルタさんが、現在の電池の基礎となるものを考案。2つの金属の間に電気を通す物質(電解質)を挟み込むと電池になることを発見したのだ。
レモン電池もボルタの電池とほぼ同じしくみで、亜鉛と銅板の間にレモンの果汁がはさまれた状態。レモン果汁が電解質というわけだ。今でもボルタの電池に一番近いのは車のバッテリーだろう。バッテリーの中には、二酸化鉛と鉛の板が何組か入っていて、そこに電解質として希硫酸の液体が入っている。
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