オペレーター(携帯キャリア)にとって端末ラインナップは重要だ。ユーザーの需要が高い人気端末を自社から提供できれば、加入者数増につながる。そういうことからも「iPhone」は重要な端末だ。
これは日本の上位3社の純増数の推移をみても明らかだろう。当然、Appleとの力関係では下手にでる必要があり、iPhone欲しさに自社の収益に悪影響が出そうな条件も飲んでしまう場合もあるかもしれない。そのような状況下で、欧州連合に泣きつくオペレーターが出てきている。
iPhoneがほしければ条件を飲むしかない?
5月末、欧州委員会(EC)は欧州内のオペレーター数社に対し質問状を送った。内容はiPhone販売にあたってAppleと結んでいる契約についてだ。Financial Timesによると、合計9ページに及ぶという質問状では、AppleがiPhone購入の最低台数を設けているか、マーケティングでの優遇を要求しているか、さらにはiPhone 5のLTE網での利用について技術や契約面で制限を設けているか(iPhone 5のLTE対応は周波数が限定的だが、それ以外にもLTE利用に制限を設けているという報告がある)などを尋ねているという。
この調査は正式なものではない。Appleが欧州の独占禁止法(反競争法)に抵触するかの調査はまだ始まっていないが、オペレーターは昨年末から非公式な形でECに苦情を出しており、今回の質問状もこの延長線上にある。3月末時点での報道では、iPhoneやiPadについてAppleがオペレーターに課す販売奨励金やマーケティングが競争の阻害につながる可能性があるという懸念が報じられていた。
あるオペレーターの元幹部に契約書の詳細について説明を受けたというGurdianの記事によると、Appleは契約にあたってiPhoneの小売価格の最高額を設けるとともに、一定の期間中(通常3年間)に年間最低購入台数を決定しているという。
オペレーターがAppleに払う額は当然小売価格よりも高く、その差額は自分たちで回収していくことになる。いわゆる販売奨励金だ。iPhone 5が登場したとき、販売奨励金は約400ドルとも見積もられていた。Androidなど他端末の販売奨励金は平均200ドルを切る程度と聞くと、iPhoneはやはり高い投資となる。もちろん、在庫が出た場合は買い取りとなる。
それだけでなく、他社に対してより有利な販売奨励金を設けることを阻止していたようだ。この人物によると、社内ではAppleの契約書は競争法に違反しているのではという懸念も出たが、「マーケティング側はiPhoneを販売できることに大喜びしており、そのような懸念はあっさり覆されてしまった」という。
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