幹部の退社が相次ぐ……
ついには最高商品責任者の小寺氏まで
端末の動向は今後も注目だが、気になるのが幹部の流出だ。2月末の「Mobile World Congress 2013」でも取材した(関連記事)、同社CPO(最高商品責任者)の小寺康司氏が退社したという5月後半のニュースは驚いたが、このほかにも、HTC AsiaのCEO、Lennard Hoornik氏、欧州・中東・アフリカ担当CEOのFlorian Seiche氏、グローバルコミュニケーション担当バイスプレジデントのJason Gordon氏、製品戦略マネージャーのEric Lin氏、デジタルマーケティング担当ディレクターのJohn Starkweather氏、グローバルリテールマーケティング担当マネージャのRebecca Rowland氏、英国アイルランド地区ディレクターのPhil Roberson氏、英国アイルランド担当セールストップのMike Coombes氏……といった具合に、まさに“流出”状態だ。Lin氏は「HTCにまだ勤務している友人たちへ――すぐに辞めて、いますぐ退社せよ」とツイートしている。
4月に発表した第1四半期の業績も苦しい。HTC Oneの発売が遅れたことなどもあり、売上高は当初の予想を大きく下回る428億台湾ドル(約1460億円)、純利益は8500万台湾ドル(約2億9000万円)。純利益は前年同期(2012年第1四半期)比で98%の落ち込みだ。その2012年第1四半期も、前年同期から70%の減少だった。HTCはデジタルメディアなどのマーケティング予算を増やしており、それらへの投資も業績に影響を与えたようだ。
このような業績の低迷や幹部の流出が、再生を図ろうとするChou氏らトップの願いに反して、全体の士気低迷を招いているとしてもおかしくない。HTCは、HTC Oneにより第2四半期は上向くとの見通しを示している。
Facebookフォンの「HTC First」は不調
さらに、Facebookフォンとのウワサの後に登場した「HTC First」も芳しくない様子。これはHTCだけの責任ではないが、AT&Tが早速の値下げ(99ドルを0.99ドル)を行なっており、販売を終了するという噂もある。噂を報じたBGRによると、AT&Tの情報筋によると発売後1ヵ月の販売台数は1万5000台を下回っているとか(http://bgr.com/2013/05/13/htc-first-discontinued-att-facebook-phone/)。英国では発売延期となったが、海の向こうの不調を聞いた消費者がどのぐらい飛びつくかは疑問だ。
HTC Oneが好レビューを受けているすばらしい製品であることは間違いない。HTCに必要なのは、マイナスイメージの払拭とかっこいいと思われるブランドとして再起することだが、これがいかに難しいかはNokiaの例が示している。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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