Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシングの使い勝手を徹底レポート
Kindle本を自力出版する冴えた(?)方法
2013年05月15日 11時00分更新
印税への険しい道のり
不親切なヘルプに泣かされながらどうにかデータをアップロードし、きちんと表示されることも確認できたら、次は電子書籍の値段を設定します。
Amazonが各国に開設しているストアの中から販売地域を選ぶことができます。まあ日本語の本の場合、海外ではあまり売れないと思いますが……(海外で役立つ内容だったり、超人気作家だったりする場合を除く)。
なおロイヤリティーとは、売値からAmazonの手数料を引いた作者の取り分です。売り上げすべてが著者の懐に入るわけではないので注意してください。100%欲しい場合は自分で同人誌を作ってコミケに参加しましょう。
KDPでは35%と70%を選ぶことができます。ちなみに商業出版の著者印税はだいたい10%で、これより少ないことはあっても増えることはまずありません。
日本では2012年12月から70%も選べるようになりました。この割高なロイヤリティーは『黒船』Kindle来日時にもずいぶん話題になったものですが、実は選べるようになったのはつい最近なのでした。嘘つき(笑)。
著者としては当然70%を貰いたいわけですが、そのためにはいろいろ条件があります。
まずは先に説明したKDPセレクトへの登録です。つまりKindleストアでの独占販売になるということですね。
そして設定する値段を$2.99以上$9.99以下にする必要があります。日本円にして296円以上、989円以下となります。なお35%の場合は$0.99以上$200.00以下(99円以上19798円)とだいぶ緩いものとなっています。どちらの場合も無料にはできないことに注意。
さらには電子書籍データのファイル容量に応じて通信コストを負担させられます。大容量データをダウンロードしようとすると大変なのは皆様ご存じのことと思いますが、それを著者に負担せいとAmazon様は仰っています。
つまり先述した印税は、
(販売価格 × 売り上げ冊数 - 通信コスト) × 0.7
になってしまうということです。また著者の取り分が減った!(汗)
この通信コストは各国のストアによって変わりますが、日本(amazon.co.jp)の場合は1MBあたり1円と規定されています。
この規定の何が辛いかというと、コミックや画像を多く使った書籍はそれだけデータ容量が多いので、さっ引かれる金額も跳ね上がるということです。
論より証拠ということで、両者についてざっと試算してみました。なお以下の表では1冊あたりの値段はすべて300円として計算しています。
大容量の電子書籍は印税に注意!? | ||||
---|---|---|---|---|
ファイル容量 | 通信コスト | 70%印税 | 35%印税 | |
小説 | 1MB | 1円 | 209円 | 105円 |
コミック | 40MB | 40円 | 182円 | 105円 |
いわゆる「文字」だけのファイルだと容量はかなり抑えられます。ちなみに文庫本1冊相当のテキストファイルの容量はおよそ200KBから300KBです。修羅場の成果物の容量が画像1枚以下かと思うとちょっと絶望したくなりますがそれはさておき。
コミックの場合、70%のほうが損とまでは言いませんがお得感はだいぶ薄れますね……。値段設定にもよりますがKindleストアでの独占販売に見合うだけの利益があるかどうかは検討の必要がありそうです。
さらに引かれる手数料
さらにこれは35%と70%のどちらの場合にも関わってくることですが、Amazonからの売り上げが振り込まれる際の振込手数料が予想外に高額です。
なぜかというとAmazonはアメリカの会社なので、振り込みは海外から円建てで行われるからです。この手数料は平均して1500円ほどかかるとのことで……た、高い(汗)。
初期設定では1000円ごとに振り込みが行われるようになっていますが、KDPに連絡してこの設定金額を増やしてもらうこともできるようです。また新生銀行とシティバンク銀行のみ振込手数料が無料になるとのことです。
同様に売り上げが発生するとアメリカ国内での商取引と見なされるので、まずアメリカで所得税が課税され、さらに日本で所得税を取られることになります。具体的にはまずアメリカで30%さっ引かれます。……最終的に著者の手元にいくら入ってくるのかはなはだ不安になってきます。
ただし日米間の条約で源泉税の免除を受けられるので、手続きをすれば免除されます。
詳しい説明は他のページに譲りますが(『EIN取得』などで検索してみてください)、この手続きが一筋縄ではいかないようで、代行業者もいるほどです。ひとつだけ言えることはKDPのヘルプページだけではぜったいに無理です(汗)。
売り上げをゲットするというのはかくも険しい道なのですね……。
ワールドワイドふたたび
アカウント登録の際に各国ごとに支払い方法を指定させられましたが、コンテンツ登録時にもワールドワイドに各国ごとに値段を付ける必要があります。日本以外で売るつもりはなくともお構いなしです。めんどくさいです。
Amazon様もいちおうその自覚はあったのか、アメリカのAmazon.comでの価格(ドル)さえ設定すれば、各国の通貨に換算して同程度の価格を自動補完してくれる機能があります。ドルやユーロはともかくそれ以外の国の通貨レートはあまり知りませんしね……(筆者だけだったらごめんなさい)。
さて、ここまで設定したら、後は「保存して出版」ボタンを押します。
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