GoogleがAppleと共同で推進していた「WebKit」プロジェクトから分離し、「Blink」に移行したことが大きな話題となっています(新Webエンジン「Blink」-GoogleはなぜWebKitを捨てたか?)。では、そもそもWebKitとは何なのでしょうか?
今のWebブラウザーは
アプリのプラットフォームでもある
このWebKitとは主にWebブラウザーで用いられているレンダリングエンジンのことです。レンダリングエンジンはデータを読み込んで画面に表示する、Webブラウザーの中核となる部分のプログラムです。
ただ、現在のWebページはテキストや画像などのデータを静的に表示するだけでなく、ユーザーの操作に合わせて動作するアプリケーションとしての要素も持っています。そのためWebブラウザー側もプラットフォームとして、処理速度が重視されるようになってきました。
また、Webブラウザーが動作する環境が、PCのみならず、性能がPCより低いスマートフォンやタブレットといったデバイスに広がっています。そのため、より高性能なレンダリングエンジンが求められ、その開発が重要視されているのです。
主要レンダリングエンジンは3つで
WebKitがモバイルでは特にシェアが高い
レンダリングエンジンの主流は、現在は「WebKit」(SafariやChromeに採用)、「Gecko」(Firefox)、「Trident」(Internet Explorer)の3つです。Operaも独自エンジンから、WebKit(その後、Blinkに)への移行を発表しています。
WebKitのオリジナルは、UNIXのデスクトップ環境として人気がある「KDE」用のWebブラウザーとして開発されたものです。ここから派生する形でAppleが中心となって2002年にスタートしたのがWebKitです。その後もオープンソースの形で開発が続けられています。
2002年当時のMacには、1997年にMicrosoftと提携した内容に基づき、Internet Explorerが標準のWebブラウザーとして採用されていました(アップルの歴史を変えたキーノートスピーチ)。その提携が終了するタイミングを前に、Appleは独自のWebブラウザー開発に舵を切ったのです。そして、WebKitの成果に基づいて、Mac OS X 10.3とともにSafariが登場しました。
WebKitはその後、iPhoneとChrome、そしてAndroidにも採用されました(IE7の4倍速い!グーグルの新ブラウザー「Chrome」)。Googleの開発者も加わってさらに開発速度を上げ、HTML5やCSS3といった標準仕様をフォローし続けるとともに、Mac、Windows、モバイル端末(iPhone、Android、現在はBlackBerryも)のいずれにおいても高いシェアを持つにいたっています。
Webブラウザーは現在のコンピューターにおいて、最も使われるアプリケーションであると同時に、ただの1つのアプリケーションという存在を超えたプラットフォームになっているだけに、その中核プログラムであるWebKitの行方が大いに注目されているわけです。