このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

スマホ対応の裏にある、ANAと三菱東京UFJの深謀遠慮

2013年03月04日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

営業2000人がタブレット、顧客獲得はスマホのUFJ

三菱東京UFJ銀行は営業にタブレットを使う(写真はイメージ)

 三菱東京UFJ銀行のリテール部門では、昨年から2000人の外訪営業担当者がサムスンの「GALAXY」タブレットを使いはじめている。稼働率は70%超。

 営業資料はすべてアプリになっている。担当者は、投資信託100種類、保険30種類をつめこんだ重いパンフレットを持たなくて済む。また、顧客との距離も近くなる。ノートパソコンと違って、隣から話しかけるように営業ができる。

 顧客獲得の鍵を握っているのは、スマホだ。

 リテールの営業先は、預金1000万円以上の「B層」、1億円以上の「C層」が中心。注目したのは年間約21万人が預金1000万円以下の「A層」から「B層」に移行すること。新規にB層を獲得するより、若いA層の顧客を手厚く育てる方が効率的だ。

 A層とのつながりで拡大をねらうのがスマホだ。KDDIとの合弁事業「じぶん銀行」などをアンテナショップに、スマホから顧客へのアプローチを進めていく。


「とりあえずスマホ対応」では勝てない、勝負を決めるのはクラウドだ

 スマート戦略をとりはじめた2社が課題に挙げるのは高度なデータ処理だ。

 ANAなら顧客の動きを見えるようにすること。バナー広告を出しても、それが直接購入に結びつくとは限らない。バナーを見たあとにリスティング広告が目に入り、クリックした可能性もある。費用対効果を高めるため、顧客の動きを把握したい。UFJならタブレットに顧客情報を集中させ、取引もそこで済ませていきたい。

 顧客情報のように機密性の高いデータを収集し、リアルタイムに処理することは、スマートフォンやタブレットだけでは不可能だ。その裏側には巨大なサーバーがあり、システムがあり、クラウドサービスを運営する企業が動くことになる。

 UFJはタブレット管理システムにSAP社の「Afaria」を採用した。アプリを会社から制御したり、端末がなくなったときにはリモートでデータを削除したり。そうした高度なセキュリティーを保ちながら管理負担を減らすためには、現状「ここしか選択肢がなかった」という。

 企業はパソコンを離れ、スマートに向かう。そこで勝敗を決めるのはデバイスの先にあるクラウドだ。その視点が欠けたまま、みんな使ってるから、といった理由で「とりあえずスマホ対応」を進めるのは、あまりスマートな考えではない。

前へ 1 2 次へ

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中